アルツハイマー病のモデルマウスは通常のマウスに比べ、水を飲む条件を学習する実験中に脳で衝動性を制御する部位に異常が生じ、衝動を抑えられないことが分かった。東京大の久恒辰博准教授や量子科学技術研究開発機構の住吉晃・博士研究員らが6日までに発表した。論文は英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。
 この部位は脳幹にある「背側縫線核」で、神経伝達物質のセロトニンを生み出す神経細胞群がある。セロトニンは食欲や睡眠のほか、怒りや恐怖、不安などの情動、学習の制御に関与することが知られる。
 久恒准教授は「アルツハイマー病患者は早期から衝動性が強まっている可能性がある。患者でも背側縫線核に異常が生じると分かれば、早期診断技術の開発に役立つ」と話している。
 この実験は、マウスに水を飲ませるノズルとライトを用意。喉が渇いた状態で、ライトが2秒間光っている間にノズルをなめると水が出ることを学習させた。
 アルツハイマー病のモデルマウス3匹を使い、1週間実験した結果では、ノズルをなめる回数が通常のマウスより1.5~2倍も多く、水が欲しいという衝動を抑えられないことが判明。実験中に機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で脳の活動の変化を調べたところ、背側縫線核の働きが異常に高まっていた。
 これまではマウスに麻酔をかけずにfMRIによる測定を行うのは、頭部の動きに伴うノイズが多いため困難だった。しかし、久恒准教授らは磁場を高めてノイズを相対的に下げ、マウスの頭部を固定して実験前に慣らす方法で学習中の鮮明な画像を得ることに成功した。 (C)時事通信社