国内各地で猛威を振るう新型コロナウイルスに感染し、死亡した80代男性の遺族が6日までに時事通信の取材に応じ、「窓越しに防護服を着て臨んだ」と面会の様子を振り返った。「死を無駄にしないでほしい」。治療法の確立などに向け、遺族は感染に関するデータを医療従事者間で共有することに同意したという。
 遺族によると、男性に発熱の症状が出たのは2月上旬。インフルエンザの検査は陰性で、解熱剤などを処方されたが熱は下がらず、病院に搬送された。親族が医師に頼み込んで新型コロナウイルスの検査が実現。陽性が確認されたが、発熱を訴えてから1週間がたっていた。「もう少し早く検査結果が出ていれば」との思いが拭えない。
 男性には基礎疾患があり、重度の肺炎で容体が悪化し、抗エイズ薬も投与された。症状が一進一退する中、遺族は2月下旬、減圧された集中治療室にいる男性との面会を病院側に申し入れた。
 認められたのは、隣接する部屋の小窓越しの面会。防護服や高性能マスク、ゴーグル、手袋、靴カバーの着用を求められ、ウイルスの付着を警戒してスマートフォンの使用も禁じられた。
 男性は人工呼吸器を付けベッドに横たわっていた。窓越しのため、声を掛けることもかなわなかった。面会時間はわずか数分。「おじいちゃん、頑張って」。回復への望みはかなわず、男性は翌日死亡した。「肩で呼吸をする感じでしんどそうだった。別人のように顔がパンパンに腫れていた」。男性の最期を思い出すと、今でも涙がこぼれる。
 自治体の紹介で、感染者を扱った経験のある業者に火葬を依頼したが、新型コロナウイルスの感染を告げるとちゅうちょされた。遺体は防疫のため専用の袋に包まれ、顔を見ることができなかった。霊きゅう車の利用も拒まれ、業者が用意した別の車両で火葬場に搬送したという。
 新型ウイルスをめぐっては、国内で12人が死亡している。 (C)時事通信社