新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、医療関係者のウイルス検査陽性も相次いで明らかになっている。住民の不安解消のため感染例の出た病院名が公表されたことで、感染者の個人情報が詮索されたり、職員の家族が出勤停止になったりし、影響は今も続く。専門家は「分からないことが多い中、不安が広がっている表れだ」と指摘する。
 医師や入院患者らの感染が続いた和歌山県湯浅町の済生会有田病院。仁坂吉伸知事は2月、病院名を公表し、陰性例も含んだ病院関係者の検査数も明らかにした。
 同病院は全員検査や経過観察を経て、今月4日に通常業務再開にこぎ着けたが、病院名公表後には、感染者の氏名や住所を詮索する問い合わせが県に寄せられたという。仁坂知事は「安全は確認しながらやっている。いじめや差別はあってはいけない」と訴えた。
 感染が判明した20代女性が勤務する熊本市の熊本託麻台リハビリテーション病院は、翌日から外来診療や入退院を中止した。その後、職員らから「幼稚園に子どもの登園を断られた」「配偶者が出勤停止になった」といった相談が寄せられたという。
 診察再開後も、近隣の診療所には「託麻台病院の患者は、受診前に必ず電話を」との張り紙が残されていた。同病院の芹口英則事務局長は「万全の態勢で臨んでいる。冷静に対応してほしい」と話す。
 社会心理学が専門の関谷直也・東京大大学院准教授はこうした周辺の反応について、「クルーズ船で問題ないと判断された後に感染者が確認されるなどしており、不安を覚える人は少なくない。差別や過剰反応とは言い切れない」と指摘。特に患者が通わざるを得ない病院への関心は高いとし、「(病院関係者は)経過観察期間を通常より長く取るなど、慎重な姿勢を示すことも必要だ」と語った。 (C)時事通信社