新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、自民党の「ポスト安倍」候補が対応に苦慮している。安倍晋三首相に対しては「対応が後手」などと厳しい批判が出ており、今後影響力に陰りが見られれば、首相からの「禅譲」を視野に入れる岸田文雄政調会長は戦略の見直しを迫られかねない。感染症問題を担当する加藤勝信厚生労働相も連日、国会で野党による追及の矢面に立たされている。
 「金利の引き下げはリーマン・ショックの際を大きく上回る対応をぜひお願いしたい」。岸田氏は5日の党会合で、感染拡大を受けて、政府系金融機関の特別貸し付けについて注文を付けた。2020年度補正予算案の検討も提言するなど、岸田氏は矢継ぎ早に対策を打ち出している。
 ただ、独自色の発揮は容易ではなく、党関係者は「政府方針と違うと足並みの乱れと言われ、一体化しすぎると存在感が下がる」と漏らす。各種世論調査では安倍内閣の支持率は下落し、党内には「後継指名するだけの体力が首相にあるか怪しくなってくる」(石破派関係者)との見方もある。
 加藤氏は担当閣僚として、新型コロナ問題の陣頭指揮に当たり、首相を支えている。旧大蔵省出身で、事務能力には定評があり、所属する竹下派中堅議員は「加藤氏だから国会審議を持ちこたえている」と擁護する。
 一方で、野党は政府の初動対応が遅かったと指摘しているほか、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」をめぐる対応には国内外に批判がある。ある閣僚経験者は「司令塔になりきれていないから、政府が混乱しているように見える」と、加藤氏の指導力に疑問を呈する。
 菅義偉官房長官は先月12日の記者会見で、マスクの増産に関し、「毎週1億枚以上、供給できる見通し」と胸を張った。しかし、品薄状態は解消されておらず、同党ベテラン議員は「菅氏は普段ならきちんと仕切るが、今回は全然だ」と語る。
 一方、安倍政権とは一線を画す石破茂元幹事長について、政府関係者からは「今回、株を下げていないのは石破氏ぐらいでは」との声が漏れる。石破氏は党総裁選で議員票獲得が課題だが、周辺は「石破氏支持の議員はこれから増える」と党内の変化に期待を示した。 (C)時事通信社