【北京時事】中国の習近平国家主席は10日、新型コロナウイルスの感染が拡大した湖北省武漢市に空路で入り、医療機関や集合住宅を視察・慰問した。習氏の訪問は、昨年12月にウイルスによる肺炎が同地で発生して以来初めて。封鎖や隔離が続く武漢市では、市民の不満が高まっており、強いリーダーシップの演出で体制批判を抑え込む思惑があるとみられる。
 国営中央テレビによると、習氏はまず、感染者隔離のため突貫工事で建設し、人民解放軍が運営する1000床規模の「火神山医院」を視察。肺炎患者をモニター越しに見舞い、医療スタッフに「ウイルスのまん延、拡散の勢いは基本的に抑え込んだ。防疫の情勢は次第に良くなっている」という認識を明らかにした。
 その上で習氏は「防疫闘争は肝心な段階に入っており、気を抜いてはならない」と指示した。
 習氏は「自ら指揮している」と強調するが、実際の防疫対策は共産党中央で肺炎対策指導グループのトップを務める李克強首相に委ねられている。李氏は1月27日に武漢を視察したが、習氏は感染者の増加ペースが減速したその約1カ月半後にようやく現地入りした形だ。
 武漢市では、団地を視察した孫春蘭副首相に向かって住民らが「全部うそだ」などと叫ぶ騒ぎが表面化したばかり。地元当局者のうその説明によって、実際の窮状が隠されると恐れて告発したものだった。今回、一転して中央テレビは10日、団地を視察した習氏が、窓から手を振る住民と「お疲れさま」と声を掛け合う姿などを伝えた。
 湖北省政府の10日の発表によると、武漢市の新たな感染者は17人にとどまった。市内の感染者は累計約5万人に及ぶが、3万1800人超が退院し、治療中の患者は減少傾向を示している。一方、市内の死者は2404人に達した。
 湖北省内は各市ごとの封鎖が続いているものの、省政府は10日、感染リスクが低い地域の健康な人に、省内移動を可能にする施策を発表した。帰省先から職場復帰を促し、徐々に経済活動を再開させる狙いがある。 (C)時事通信社