新型インフルエンザ対策特別措置法の対象に新型コロナウイルスを加える改正案が13日、成立する見通しだ。感染拡大で初の「緊急事態宣言」が現実味を帯びる中、大幅な私権制限への懸念は根強い。一方、新型コロナ患者の治療に取り組む医師からは早期導入を求める声も聞かれた。
 改正案は、首相が緊急事態を宣言すると、都道府県知事を通じて住民に外出自粛を要請したり、学校や興行施設などに使用制限や催し物中止を指示したりできる。臨時の医療施設を開設するため、土地や建物を所有者の同意なしに使うことも可能だ。
 2012年の特措法成立時に日弁連会長として反対した宇都宮健児弁護士は「強力な人権制限を伴うのに要件が不明確で、感染症対策に効果があるとの科学的根拠も示されていない」と批判。国会の同意や事後承認も不要で、首相の独断で集会の自由など憲法で保障された権利が侵害されかねないと指摘する。
 政府の対応を批判する言論が封殺される可能性もあるとし、「よほど慎重に運用しないと社会全体が萎縮する」と警鐘を鳴らす。9日には憲法学者らと連名で緊急声明を発表し、法改正の撤回と再検討を求めた。
 「法改正の具体的な目的が見えない」と話すのはNPO法人医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師。新型ウイルスの感染力は比較的強いが、致死率は低いと判明していることから、「日本が中国武漢市のような状態になることはない。高齢者の重症化を防ぐ対策が重要で、政府の権限強化は必要ない」と断じた。
 一方、関東地方の医療機関で新型コロナ患者の治療に携わる男性医師は「問題点もあるが議論している時間はない」と早期導入を求める。複数の高齢者施設で死亡者が続出するような事態になれば、強力な対策が即座に求められるといい、「現場の医療関係者が頑張るためには法的裏付けが必要だ」と話した。 (C)時事通信社