新型インフルエンザ対策特別措置法の改正により、政府は今回の新型コロナウイルスに関して「緊急事態」を宣言できることになった。だが、その基準には曖昧さが残る。私権を制限するため異論も根強く、政府は発動に当たり慎重に検討する方針を強調している。
 特措法は緊急事態宣言発出の要件として(1)国民の生命と健康に著しく重大な被害を与える恐れがあるものが国内で発生(2)全国的かつ急速なまん延により国民生活、国民経済に甚大な影響を及ぼすか及ぼす恐れがある―と判断された場合と規定。施行令でさらに「重篤な症例の発症頻度が季節性インフルエンザに比べて相当程度高い」「感染経路が特定できない」ことを基準に挙げる。
 手続きとしては、首相が専門家でつくる「基本的対処方針等諮問委員会」に諮り、要件に該当するとの回答を得れば、期間や対象区域を明示して宣言を出すとされている。
 新型コロナ政府専門家会議の尾身茂副座長(地域医療機能推進機構理事長)は13日の参院内閣委員会で、「相当程度高い」とする基準について「病原性、致死率が通常のインフルエンザと比較してかなり高い」状況だと説明した。ただ、不明確さはなお否めず、特措法担当の西村康稔経済再生担当相は「定量的に示すのは難しい」と認めた。
 宣言が出れば、都道府県知事は外出自粛の要請や学校など施設の使用制限をすることができる。臨時医療施設を設けるため土地・家屋を同意なく使用したり、医薬品など特定物資を収用したりする権限も与えられる。
 強制力を伴う点で、与野党双方から懸念の声が上がった。これに対し西村氏は、できれば抜かないことを前提とする「伝家の宝刀」だと繰り返し答弁。宣言について菅義偉官房長官は13日の記者会見で「専門的な知見に基づき慎重に判断する。現時点で直ちに出す状況にない」と述べた。
 ただ、安倍晋三首相はこれまで、全国一斉休校など法的根拠のない要請を重ねた。主要野党のあるベテラン議員はこれに触れ、「首相なら宣言に突き進む不安が残る」と指摘した。 (C)時事通信社