【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)が30日間の欧州入域禁止を決めた。ほぼ欧州全体を事実上「封鎖」する前例のない措置は、新型コロナウイルスとの闘いに強い決意を示すものだ。ただ、急速な感染拡大を前に各国の政策協調が追い付かず、「単一市場」という欧州経済の根幹が揺らぐ中で打ち出した苦肉の策の側面も大きい。
 「敵はウイルスであり、市民と経済を守るために全力を尽くさなければならない」。フォンデアライエン欧州委員長は17日、入域禁止決定後の記者会見で危機感をあらわにした。
 新型コロナの新たな「震源地」と化した欧州では、最も感染が集中するイタリアからの原則入国禁止をオーストリアが10日に表明したことを皮切りに、各国がなし崩し的に隣国との国境を封鎖。協調を訴える欧州委をよそに、EUの理念である「移動の自由」が大きく制約されつつある。
 欧州各地で数十キロにも及ぶ国境審査待ちのトラックの列が発生するなど、すでに欧州中に張り巡らされたサプライチェーン(部品供給網)への影響が深刻化。移動の自由を前提にしたEUの「単一市場」崩壊の懸念が強まっている。
 今回の入域禁止は、各国の「一方的封鎖」を非難しEU全体での統一的対応を訴えたフランスのマクロン大統領が主導したとみられ、域外に壁を作ることで「域内の国境管理を解除できる」(欧州委)との狙いがある。
 ただ、EU各国首脳は物流円滑化では一致したが、国境管理の解除には「まだかなり時間がかかる」(フォンデアライエン氏)というのが現状だ。一方、今回の措置ではトラック運転手など輸送関係者の欧州入域は認めるが貿易への影響は不可避。そもそも既に域内でまん延状態にある中、ウイルス対策としての効果も不透明で、EUは混迷の度を深めつつある。 (C)時事通信社