【ジャカルタ時事】インドネシアの新型コロナウイルス対策が迷走している。「人混みを避けて」と呼び掛けた直後に大混雑を引き起こし、「冷静」を求めながら適切な情報を出さず、国民の不安に拍車を掛けている。
 「冷静さを保ってパニックにならず、生産性を維持しつつ警戒度を高めよう」。ジョコ大統領は15日の演説でこう訴えた。「人同士の距離を保つのが重要だ」とも述べ、在宅勤務・学習を呼び掛けた。
 翌日、首都ジャカルタ特別州のアニス知事は、公共交通機関の運行を大幅に縮小させた。大量高速鉄道(MRT)は16編成を4編成にし、営業を7時間短縮。通常248路線のバスはわずか13路線に絞った。
 ところが、多くの企業が在宅勤務を導入する前だったため、各地で大混雑と大行列が発生。感染を拡大させかねない状況を招いた。抗議が相次ぎ、知事は即日撤回した。
 政府の「情報隠し」にも批判が高まっている。当初は氏名と住所を除いて感染者の詳細な情報を公開したが、地元紙が「初の感染者」にインタビュー。チフスや気管支肺炎と誤診されていたと報じた。それまで「検査漏れ」を疑う国内外の声に「万全だ」と反論していた政府への疑念が深まった。
 「初感染」については、テラワン保健相が「一緒にダンスしたマレーシア在住の日本人が感染源」と断じたが、日本人と同時期に発症していたことも判明。保健相の説明に疑問符が付いた。先に陽性確認された日本人が連絡していなければ見過ごされた可能性も高く、不信感を増大させた。
 政府はこの後、パニック防止を理由に感染者の国籍や居住地、勤務先、渡航先などの情報を伏せている。だが、「感染者ゼロ」だった2月から続く買い占めは収まらない。地元紙は「疑心暗鬼にさせているだけ。詳細な情報開示で成功したシンガポールや台湾を見習うべきだ」と指摘する。
 インドネシアの感染者数は20日時点で死者32人を含む累計369人。死亡率は約8.7%に上る。 (C)時事通信社