【カイロ時事】新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、イスラム教への信仰心があつい中東諸国では、大勢の人が集まるモスクなどの礼拝所を閉鎖する動きが広がっている。ただ、インターネット交流サイト(SNS)には「礼拝できないぐらいなら、感染して殉教した方がましだ」という極端な声も少なくない。感染封じ込めのため、信徒には自宅などでの礼拝が呼び掛けられているが、各国政府は反発の高まりを警戒しつつ対策を模索している。
 イスラム教の二大聖地を擁するサウジアラビアは、既に「ウムラ(小巡礼)」を目的に聖地メッカを訪れる外国人の受け入れを停止。メッカや聖地メディナを除いてモスクでの礼拝も認めないと表明した。しかし、金曜礼拝を翌日に控えた19日になり急きょ、聖地にあるモスク敷地内での礼拝も禁止に。サルマン国王は演説で「困難な時を迎えているが、必ず過ぎ去る」と理解を求めた。
 同様の措置は、中東や北アフリカ、東南アジアなどイスラム教徒が多い各国でも広がる。ロイター通信によれば、公式統計では感染確認者が1人もいないシリアでは、首都ダマスカスにある世界最古のモスクの一つとされるウマイヤ・モスクが封鎖。1000年以上の同モスクの歴史で初めてという。
 中東で最も感染拡大が深刻なイランは、2月19日にイスラム教シーア派聖地コムで最初の感染死者が発表された。その後も隔離措置を怠ったため、国内だけでなく、イランから帰国したシーア派巡礼者を通じて近隣の中東諸国にも拡散させたと批判を受けている。
 イラン政府は各地のシーア派聖廟(びょう)の封鎖に消極的だったが、今月中旬にコムや北東部の聖地マシャドなどで著名な聖廟やモスクの閉鎖を決定。反発する市民が撤回を訴え、コムの廟の前で気勢を上げたとする動画もSNSに投稿された。
 中東アラブ諸国で最多の人口を抱えるエジプトでは、20日も金曜礼拝に足を運ぶ人の姿が見られた。ただ、当局の指示で礼拝は短時間にとどめ、説教が3分以内で終わった所もあったという。21日には礼拝施設の2週間封鎖が発表されたが、地元メディアは、「人のいないモスクは見たくない」「疫病を取り除くためには神に近づくべきだ」という市民の声を伝えた。 (C)時事通信社