【ロンドン時事】新型コロナウイルスの感染拡大による混乱が収まらない。世界中のスポーツイベントが相次いで中止や延期に追い込まれ、7月24日開幕の東京五輪開催にも暗雲が立ち込めている。スポーツ界だけでなく、経済面でも世界中にインパクトを与える夏の祭典は本当に行われるのか。世界各地で話題に上る中、この10日間ほどで状況が少しずつ変わり始めた。
 ◇きっかけは米大統領
 「1年間延期した方がいいかもしれない」。トランプ米大統領による12日の発言が、一つのきっかけになった。五輪に大選手団を送る米国はメダル獲得数上位の常連で、五輪の国内独占放映権を持つNBCは、国際オリンピック委員会(IOC)の財政を莫大(ばくだい)な放映権料で支えている。その国のトップの言葉は影響力が強い。
 予定通りの五輪開催を目指すと繰り返してきたバッハIOC会長にも、変化がみられた。ドイツのテレビ局によるインタビューで、世界保健機関(WHO)から大会の中止や延期を助言された場合は「従う」と述べた。
 その後、IOCは17日から3日間にわたり、各国際競技団体(IF)や各国内オリンピック委員会(NOC)の幹部、選手向けに臨時電話会議を開催。「延期」や「中止」説の火消しのためだった。だが、バッハ会長は米紙ニューヨーク・タイムズが19日に報じたインタビューで「もちろん、さまざまなシナリオを検討している」と明かし、初めて通常開催以外の可能性を示唆。「判断は時期尚早」とも語り、これまで通り決断のタイムリミットは明言しなかったものの、その時は確実に迫っている。
 ◇一部から不安や反発の声
 開幕まで約4カ月。選手に対して「五輪の準備に全力で取り組んで」と訴えるIOCの意に反し、一部では不安の声が上がっている。
 陸上女子の五輪金メダリスト、エカテリニ・ステファニディ(ギリシャ)はツイッターで「IOCは練習を続けさせることで私たちや家族の健康、公衆衛生を危険にさらしたいの?」。各国NOCでは、ノルウェーが延期を正式に提案し、スペインやスロベニアの会長も同様の見解を示した。電話会議で歩調を合わせようとしたIOCの思惑は早くも崩れた。
 内部からは批判の声が。へーリー・ウィッケンハイザーIOC委員(カナダ)はツイッターで「IOCは無神経で無責任」と反発。外出制限などで満足に練習できない選手がいるにもかかわらず、突き進めと号令をかけるだけの方針に疑義を唱えた。IOCに個々の事情を考慮する余裕はなく、スポークスマンは「現状では理想的な解決策はない」と認めるしかなかった。
 ◇形崩れた五輪マーク
 聖火をめぐっても異例の事態が続く。12日にギリシャのオリンピアで行われた採火式や19日にアテネであった引き継ぎ式は会場に観客を入れず、規模を大幅に縮小して実施。ギリシャ国内の聖火リレーは途中で打ち切られた。
 20日、宮城・航空自衛隊松島基地で行われた聖火到着式。簡素化された式典に登場した曲技飛行チーム「ブルーインパルス」が5色の煙で空に描いた五輪マークは、多難な先行きを暗示するかのように強風ですぐに形が崩れた。 (C)時事通信社