【香港時事】新型コロナウイルスの流行を受け、香港政府は市民への現金給付やほぼ全世界からの渡航者に対する隔離措置など、大胆な防疫措置を連発している。昨年の大規模デモからくすぶる市民の反政府感情の再燃を押さえようと、当局はかじ取りに必死。林鄭月娥行政長官にとっては、ウイルスとデモへの「両にらみ」が続く。
 「感染拡大はより深刻な状態に入った。さらに厳格な措置が必要だ」。林鄭長官は17日の会見で、マカオと台湾を除く全ての国・地域からの入境者に対する強制隔離を発表。隔離対象者向けに、スマートフォンと連動して位置確認ができるリストバンドを配備する徹底ぶりだ。
 香港政府は1月以降、複数の出入境ポイントの閉鎖や幼稚園から高校までの一斉休校、大規模な財政出動を続々と打ち出した。封じ込めは一定の効果を上げ、2月末までは感染者は2桁台にとどまっていた。
 しかし、市民の評価は芳しくない。会社員の男性(22)は「政府の対応が遅いことで、多くの市民が不満を抱いている。外国からの入境者の隔離措置も、3月初旬に打ち出すべきだった」と指摘。30代の女性は「林鄭長官はマスク価格の高騰を放置している」と批判した。
 今月中旬以降は海外からの駆け込み入境者が増え、「輸入症例」も急増。20日には1日として最多の48人の感染が確認され、「全外国人の入境禁止」を求める声も高まっている。
 昨年の逃亡犯条例改正案に端を発したデモを通じ、政府の信用は地に落ちた。地元紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは先月、香港政府の現状を「嫌われ過ぎて何をしても信頼されない状態」と表現。デモは下火になったものの「検疫所の設置反対」などを名目とした抗議活動や爆発物が仕掛けられる事件が散発しており、政情不安は変わらない。
 感染拡大が収まったとしても、6月には大規模デモから1年の節目、7月には中国への返還記念日、9月には立法会(議会)選挙と、政治的イベントが控える。民意の「地雷」を踏まないよう神経をとがらせる政府にとって、綱渡りの日々が続きそうだ。 (C)時事通信社