【ワシントン時事】新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた米企業が、政府支援を求めて行列をつくっている。トランプ大統領は航空業界などに協力する考えだが、対象の線引きは容易ではない。2008年のリーマン・ショックの際に大手金融機関が優先的に公的支援を受けた経緯があり、特定業界の救済には反発も根強い。
 「勝者と敗者を選びたくない。みんなが利益を受けられるようにしたい」。大規模な人の移動制限措置が講じられる中、トランプ大統領は企業支援策の対象をめぐり、議会との調整が難航していることをにじませた。
 トランプ氏は、航空やクルーズ船、自身が財を成したホテル業界は「すばらしい業種で失うことはできない」と明言。600億ドル(約6兆6000億円)の救済を要請した航空機大手ボーイングも「守らなければならない」と、政府による株式取得を含め、手を差し伸べる意向をにじませた。
 政府は当初「的を絞った支援」(高官)を想定していたが、米金融大手の調査では、小規模事業者の96%が影響を受けていると回答している。飲食業界は4550億ドルの支援を求めており、米紙は、従業員に涙ながらに解雇を通告したレストラン経営者の悲鳴を伝えている。
 与党共和党は支援案に、航空業界の要求を丸のみする580億ドルを計上。従業員500人以下の小規模事業者には低利融資など3000億ドル超を含める方針だが、支援を訴える企業や団体は膨らむ一方だ。
 しかし、公的救済をめぐり国民の記憶に残るのが、リーマン・ショックで最優先された大手金融機関。税金で立ち直った大手金融機関は、多くの企業が不振にあえぐ中で早々と経営陣の高額報酬を復活させ、国民の怒りを買った。
 英紙フィナンシャル・タイムズによると、経営陣や株主にメリットが大きい企業の自社株買いは、昨年、推計で7300億ドルに達した。ボーイングの救済要請では役員のヘイリー前国連大使が「(大企業を優先する)救済を行うことは政府の役割ではない」と反発して辞任した。企業支援の在り方を誤れば、秋の大統領選での再選をにらむトランプ氏の命取りになりかねない。 (C)時事通信社