【ブリュッセル時事】新型コロナウイルスの感染が急拡大する欧州で、医療機関で使うマスクや人工呼吸器の不足が深刻化している。欧州各国は事態打開へ連帯できず亀裂が発生。間隙(かんげき)を縫うように中国が物資の支援を活発化させ、影響力を拡大させている。
 ◇伊支援に応ぜず
 「誰が生き残るかを決める恐ろしい選択をしなければならない」。米誌タイム(電子版)は10日、人工呼吸器などが足りない窮状を訴えるイタリア北部の医療関係者の言葉を伝えた。その後も状況悪化に歯止めはかからずイタリアの死者は5000人に迫る。スペインでも1000人を超え、各国が医療崩壊を恐れている。
 伊政府は2月から欧州連合(EU)に医療物資支援を求めてきたが「EUのどの国も応じなかった」(マッサーリEU大使)。逆にドイツは4日、マスクなどの輸出禁止を表明。フランスも3日にマスクの国家管理を打ち出すなど囲い込みの動きが出た。
 欧州委員会は「一方的な行動は良くない」(フォンデアライエン委員長)と独政府に禁輸を撤回させ、19日にはマスクや呼吸器などの共同備蓄制度も発表したが、対応は後手に回っている。
 ◇東方拡大に影
 イタリアを最初に助けたのは中国だ。12日には約30トンの医療物資と医療チームが到着。ディマイオ伊外相は「これが連帯というものだ」と中国を称賛した。
 中国は、先進7カ国(G7)で初めてシルクロード経済圏構想「一帯一路」推進の覚書を締結したイタリアとの一段の関係深化をうかがう。さらに感染拡大に苦しむ他の欧州各国にも次々と支援を展開。「マスク外交」を強めている。
 対照的にEUには批判が強い。医療物資を確保するため15日に導入した域外への輸出制限は、周辺の加盟交渉国も切り捨てている。
 EUと加盟交渉中のセルビアのブチッチ大統領は「欧州の連帯など存在しない。おとぎ話だった」とEUの利己的な姿勢を非難。「われわれを助けられるのは中国だけだ」とも言い切った。欧州の足並みの乱れは、中国やロシアに対抗するEUの東方拡大戦略にも影を落とし始めた。 (C)時事通信社