高齢者を社会全体で支える公的介護保険制度が創設されてから4月で20年を迎える。「事業者を選べて使い勝手が良く、食事や掃除も含め利用者に多様なサービスを提供できる」(九州地方のベテラン介護士)と制度自体を評価する声は多いが、この20年で高齢化が進み、介護需要が増大。保険料負担が重くなるほか、深刻な人手不足といった課題が顕在化している。
 政府はこれまで介護現場の人手不足を解消するため、人件費アップの原資に充てる「処遇改善加算」を設けるなど対応を講じてきたが、十分だとの声は少ない。都内の老健施設の経営者は、もともとの介護報酬上の人員配置基準が厳しすぎる上、「肉体的な負担が大きいことを考えれば、それでも割安感は強い」と指摘。さらなる改善が必要と訴える。
 ただ、65歳以上が支払う介護保険料は、介護関係需要の増加に応じて上昇する仕組みであるため、既に制度創設時の月額2911円(全国平均)から2018~20年度は同5869円へと2倍以上に増えた。
 財源にも限りがある。厚生労働省の政務三役の一人は「消費増税というと世論は大きく反応するが、実は大きな負担をお願いしているのは保険料。さすがに限界に近づいている」と指摘する。
 このため、処遇改善に向けた財源を割く一方で、財務省などを中心に介護の財政負担を圧縮するため、要介護度の低い人への生活援助(料理や洗濯)サービスを抑制する検討がされている。しかし、介護保険制度の創設当時を知る事業者は「利用者に一番喜んでもらえるのは、年をとって一番大変になる料理、洗濯、買い物だ。そういう発想は、現場を知らない人のものだし、本来の制度の目的を見失っている」と批判する。
 国民負担の増大を抑えつつ、支え手の処遇改善や制度の目的をどうやって同時に達成するか。介護保険制度の維持に向けた大きな課題となっている。 (C)時事通信社