【ワシントン時事】新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自国優先の輸出制限措置で、医療物資や食料品の国際的なサプライチェーン(部品供給網)が揺らいでいる。日米欧と新興国で構成する20カ国・地域(G20)貿易相は30日、不要な貿易制限を避ける方向で一致したが、リーマン・ショック時に合意した貿易制限の「停止」までは踏み込めず、結束の難しさを印象付けた。
 通商政策の監視機関グローバル・トレード・アラートが3月下旬に公表した調査によると、英仏など54の国・地域が年初から一部の医療品の輸出を制限。医療品貿易は「中国、インドが独占的な立場」だとし、人工呼吸器を輸入に頼るアフリカ、中東、南米諸国が不利になると分析した。また、ロシアやウクライナでは、穀物の輸出制限の検討が報じられている。
 世界経済は戦後最悪の不況入りが濃厚だが、G20に強い連携は期待できそうもない。リーマン危機時の2008年の首脳声明は「今後12カ月間、新たな貿易障壁と輸出制限、輸出刺激策を取らない」と明記したが、今回の貿易相声明は制限措置を必要最小限に抑えることを確認するにとどまった。
 トランプ米政権の高関税政策が保護主義の連鎖を招いている側面もある。新型コロナで打撃を受けた米産業界には関税撤回を求める声が根強いが、トランプ大統領は「実施する理由はない」と一蹴。ルメール仏財務相も「国家主権を守ることも必要だ」と貿易制限の一定の正当性を訴えている。
 1930年代の世界恐慌は、当時のフーバー米政権が導入した高関税政策をきっかけに深刻化したとされる。米外交問題評議会のリンゼー上級副会長は「トランプ政権の変化が望めない以上、他国にも自律的な対応が求められる」と語り、歴史を繰り返さないよう警告している。 (C)時事通信社