新型コロナウイルスの感染者や死者が欧米を中心に急増する中、病院関係者らが使用する医療用の高機能マスクをめぐる国際的な争奪戦が起きている。とりわけ最も多数の感染者を抱える米国が「買い占め」に走っているとして、欧州などの同盟国から批判が相次いでいる。
 米政府は3月、医療用のマスクや手袋、防護服などを確保するため、冷戦時代に成立した「国防生産法」を発動して民間企業に増産を要請。今月3日には同法に基づき、マスクなどの「不当な輸出」停止を命じた。トランプ大統領は「重要物資の悪質な輸出を阻止することで、買い占めや価格つり上げを防ぐ」と説明している。
 米複合企業スリーエム(3M)は3日、同社製造の高機能マスクについて、米政府がカナダや南米向けの輸出中止を求めたと主張。「重大な人道問題が生じかねない」と訴えた。米メディアによれば、カナダのトルドー首相は「重要な物資やサービスの往来を止めるのは間違っている」と米側の措置に反発している。
 米国は国産品だけでなく、中国などで製造された医療用品の確保にも奔走している。欧州メディアによると、上海からフランスに送られる予定だった医療用マスク数百万枚の一部が最近、発送直前に輸出先が米国に切り替えられた。米国の業者が3倍の買い取り価格を提示したためといい、仏外交官は3日付の仏紙フィガロに「米政府がこの『ハイジャック』に同意していないとは信じがたい」と批判した。
 ベルリン市のガイゼル内相は3日、警察官に着用させるために注文した20万枚のマスクが、経由地のバンコクで米国に宛先を変更されたと表明。米政府による「現代の海賊行為だ」と批判した。ただ、米政府は疑惑を明確に否定。独紙ターゲスシュピーゲルも4日、警察広報担当者の話などから、米政府の指示ではなく、仲介業者がより高い価格の提示を受けて売却先を変更した可能性があると報道。真相は不明で、困惑が広がっている。
 米政府は他国向けマスクの「横取り」を否定しているが、国土安全保障省当局者はロイター通信に、十分な数を確保できるまで購入を続けると断言する。トランプ氏は4日の記者会見で「われわれにはマスクが必要だ。他(国)の人々に渡したくない」と述べ、輸出停止命令を正当化した。 (C)時事通信社