新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安倍晋三首相が発令した緊急事態宣言。罰則はないものの、都道府県知事は法律に基づいた外出自粛要請や、多数の人が集まるイベント中止の指示ができる。感染防止を最優先とする圧力が強まり、異なる意見の表明が難しくなる恐れはないのか。専門家からは「社会が一色に染まりかねない」との懸念も浮上している。
 新型コロナへの対応をめぐっては、安倍首相が2月末、全国の小中高校などを対象に一斉の臨時休校を求めた。文部科学省の3月中旬の集計で、感染者がほとんど出ていない地域も含め、小中高校の98%超が休校を決めた。
 緊急事態条項創設をめぐる憲法改正問題に詳しい永井幸寿弁護士(兵庫県弁護士会)は「法律に基づかない首相の要請だが、拒否しにくい。だが、子どもたちの教育を受ける権利は制約された」と批判する。
 休校の効果も明確にならないまま、今度は緊急事態宣言を求める声が高まったことを「同調圧力がさらに強まり、批判もできなくなる危険性がある」と危惧。「宣言は閉塞(へいそく)状況をいっぺんに解決できる魔法のつえではない」と強調した。
 3月に、国や埼玉県から自粛を求められた格闘技イベントがさいたま市で開催された際は、批判が殺到した。主催者はマスクの配布や消毒液の設置など対策を講じたものの、インターネット上では怒りやいら立ちが収まらなかった。
 「漠然とした不安感が高まっている」と分析するのは、金沢大の仲正昌樹教授(政治思想史)。「政府に独裁的に物事を進めてほしいという風潮が強まっている。相場観や落としどころも不明確なまま、一方向へ走りだし制御不能となる怖さを知るべきだ」と語った。 (C)時事通信社