新型コロナウイルスの感染拡大で不要不急の帰省、旅行の自粛呼び掛けが続く中、羽田空港やJR東京駅では9日午後、里帰り出産や学生寮の閉鎖など、やむを得ない理由から地方に向かう人の姿があった。
 羽田空港第1ターミナルでは、出発便の半数ほどが欠航となり、ロビーに人はまばら。飲食店や土産物店も大半が休業していた。
 妊娠8カ月という東京都杉並区の女性会社員(31)は、出産のため3歳の娘を連れて北海道旭川市に帰省。「ウイルスを持ち帰る不安もあるが、親元で産みたい気持ちもある。東京にいたら感染するかもしれないし、不安だらけだ」と話し、夫に見送られた。
 東京駅にも人が少ない。滋賀県に帰省するという男子大学生は「寮が閉鎖され、追い出された」と話し、鳥取県に帰る友人と共に急ぎ足で改札に向かった。
 八重洲南口の高速バスターミナルでは、2、3人しか乗っていないバスが定期的に出発。大幅に減便運行しているとのアナウンスが流れていた。
 目が不自由でつえをついていた都内の無職女性(24)は、茨城県日立市行きのバスに乗務員の助けを借りて乗車した。実家のある同市の病院に2、3週間ごとに通院しているといい、「バスが止まったら薬ももらえない」と不安そうに話した。
 同県大子町の中森節子さん(88)は、都内の病院でがんの検査を終えて帰宅する途中。「行きのバスは自分しか乗っていなかった」と申し訳なさそうだった。
 島根県出雲市の出雲空港では、70代の女性が東京に住む娘を待っていた。夫は病気を抱え、医師からはゴールデンウイーク明けまで持つか分からないと言われた。「娘がウイルスを持ってくる可能性もあり、親戚からは帰らせない方がいいと言われたが、お父さんに会わせたくて」と話した。
 帰省した岐阜県各務原市の女性(62)も父が危篤といい、「病院は島根県外から来た人には会わせられないと言っているが、お別れに来た」とつぶやいた。 (C)時事通信社