【ニューヨーク時事】米国で新型コロナウイルスの感染拡大が最も深刻なニューヨーク州の病院で集中治療室(ICU)の人材が逼迫(ひっぱく)している。外出規制が奏功し、当初の予想より早く患者数の増加は頭打ちになりつつあるが、各病院のICUは既に本来の病床数以上の患者を受け入れている。医療従事者も足りず、現場の看護師からは「溺れる寸前」と悲鳴が上がる。
 ◇2週間ずっと満床
 「本当に人が足りない。仕事はきつくて状況はどんどん悪くなる。かろうじてまだ溺れていない(持ちこたえている)」。ニューヨーク市ブルックリンにある病院の集中治療室(ICU)で働く20代の看護師の女性は今週、電話取材にこう訴えた。ICUは2~3週間前から満床状態が続き、州の発表では新たにICUに入る患者は減少傾向にあるが、「ずっと満床だから実感はない」と話す。ICU外の患者の容体が急変した場合に対応するため、他の病院への転院などを通じてICUの病床の空きを1床は確保するようにしているという。
 ICUの患者はほぼ全員が人工呼吸器を使っており「その状態から回復した例は多くない」。現在最も不足しているのはICUに対応できるスタッフだ。「病院はICUで働けるスタッフの増員なしに病床数を増やした。スタッフの増員はあってもICUにある機器を使えず、研修しようにも患者がいっぱい居て、時間が取れない」と語る。
 ◇進む病院のICU化
 州の現在の入院患者は約1万8300人で病床は足りている。しかし、新型コロナ患者には容体が急変して重篤化しがちな特徴があり、ICUにいる患者は6日時点で約4500人と州本来の収容能力(約3000床)を上回る。各病院は手術室をICUに作り替えるなどして、「病院のICU化」(クオモ州知事)を進めてきた。
 州は各病院に最低50%の病床数増加を義務付け、病床確保に努めてきた。しかし、患者や病床が増加する一方で、医療従事者には感染やその疑いで自主隔離になる人もいる。ニューヨーク市は今後、追加で4万5000人が必要と推定し、3日には災害警報を流す携帯電話の緊急速報で、手が空いている医療従事者に協力を呼び掛けた。
 ◇日本もマンパワー不足
 日本集中治療医学会理事長の1日の声明によると、人口10万人当たりのICUのベッド数はドイツが29~30床に対し、死者数が世界最大のイタリアは12床程度。日本は5床程度でさらに少ない。また、コロナ患者に対応するには看護師や人工呼吸器を扱える医師も不足しているという。
 コロナ患者の治療に当たるニューヨークのマウントサイナイ医科大学麻酔・集中治療部の野本功一医師は「特に看護師が逼迫している。ICU増設の結果、もとからICUにいた看護師だけでは全く足りず、(一般病棟の)看護師も急ピッチで訓練している状態」と話す。日米両方の病院で勤務経験のある野本氏は「日本は感染症の専門家やICUに対応できる医師も限られ、マンパワーがもともと足りない。大都市やそれ以外にも感染が広がれば医療崩壊が足音を立ててやってくるだろう」と警鐘を鳴らしている。 (C)時事通信社