【パリ時事】新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なイタリアやスペインで、欧州連合(EU)懐疑派の極右やポピュリズム(大衆迎合主義)の政治家が、EUや政権への批判を強めている。一方、ハンガリーのオルバン首相は、非常事態法を通じ無期限の強権を獲得した。各国が感染対策に追われる中、危機の政治利用も進んでいる。
 ◇医療崩壊の原因
 イタリアでは、EUからの金融支援策が得られないことに不満が強い。そもそも医療崩壊に陥ったのは、EUが求めてきた財政健全化によって医療費削減が続いていたからだとEUの責任を問わずにはいられない。
 伊極右政党「同盟」のサルビーニ党首(前副首相)はツイッターで「必要なら(EUに)別れを告げる」とEU離脱論を扇動。ファシストの流れをくむ右派「イタリアの同胞」のメローニ党首は、市庁舎でEU旗を掲げないよう呼び掛けて支持を集めた。EU旗を燃やす過激派の動画もインターネット上で広まった。
 米国に次いで世界で2番目に感染者が多いスペインでは、新興極右政党ボックス(VOX)が、感染拡大を「サンチェス政権の対応が遅かったせいだ」と非難。政権への不満を表明するため、夜に一斉に鍋をたたいて鳴らす運動を市民に呼び掛けた。地元メディアは、賛同者が増えつつあると報じている。
 ◇首相に大権付与
 ハンガリーは、他の欧州諸国に比べ被害は少ないものの、議会は3月末に非常事態法を可決。オルバン首相に対し、政府が危機収束と判断するまで大権を付与した。
 欧州議会からは「自由と民主主義を踏みにじる行為」とハンガリー批判が噴出した。しかし、オルバン首相は「パンデミック(世界的流行)が終わったらその話をしよう」と受け流している。
 各国の動きに対しEUは、被害の大きい国への金融支援をめぐり加盟国間の意見が対立。分裂の危機にさらされ、足踏みが続く。
 フォンデアライエン欧州委員長は2日、「加盟各国が異例の緊急措置を取らざるを得ないことは理解している」と語った。しかし「特にハンガリーについて、対策の行き過ぎを憂慮している」と述べ、名指しで懸念を示している。 (C)時事通信社