【ワシントン時事】トランプ米大統領は14日、新型コロナウイルスをめぐる対応で「中国寄り」と批判してきた世界保健機関(WHO)への資金拠出停止を発表した。「米国第一」を掲げ、国際協調に消極的なトランプ氏は、新型ウイルスの感染拡大という世界的危機にもリーダーシップを取る気配はない。初動対応の遅れを批判される自身の責任転嫁のためにWHOを標的にした格好だ。
 歴代米政権では、ブッシュ(子)元大統領が2003年、エイズ撲滅に150億ドル(約1兆6100億円)を投じる支援策を推進。オバマ前大統領も14年、エボラ出血熱対策で西アフリカに米軍部隊を派遣するなど公衆衛生をめぐる国際協力を推進した。
 これに対しトランプ政権は、新型ウイルス対策で医療用の高機能マスクなどの国外流出を阻止する方針を表明するなど自国最優先の姿勢を鮮明にしてきた。さらにトランプ氏は、新型ウイルスへの対応に当たるWHOを「中国の情報開示を信用し、20倍の感染者を出した」と攻撃、資金拠出停止に踏み切った。
 背景には、新型ウイルスの米国での感染者、死者が世界最多となる中、トランプ氏が再選を目指す11月の大統領選に向けて自身の「初動対応の遅れ」が争点化される事態を恐れていることがある。WHOを新型ウイルス拡散でやり玉に挙げたのは非難の矛先をそらすためだったとみられる。
 ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)が11日、トランプ氏が新型ウイルスの脅威に対する専門家らの警告を軽視していたことを検証する記事を掲載すると「フェイク(偽)ニュースだ」と反発。13日の記者会見では、トランプ氏の対応を称賛する声を集めたビデオを放映するなど自己弁護に必死になっている。
 一方、トランプ氏の発表を受け、新型ウイルス対策をめぐる国際協力に影響が出るとの懸念が高まっている。グテレス国連事務総長は「WHOの活動に対する資金を削減する時ではない」と訴えた。また、米国のWHOへの資金拠出停止によって、逆に中国の国際的影響力がさらに高まる可能性を指摘する声もある。 (C)時事通信社