【ニューヨーク時事】「夜に酸欠に陥ったらと思うと、まともに眠れなかった」。ニューヨーク市内の病院で2週間、新型コロナウイルス患者の治療に当たった後、感染が判明して療養中の内科医師、宮下智氏(30)が時事通信のメール取材に応じた。パンデミック(世界的流行)下では、医療現場の需要と供給の不均衡が「どんなに用意周到にしていても起こる」と指摘し、現場のニーズに迅速に対応できる体制づくりの重要性を訴えている。
 ◇長引く症状
 宮下氏は病院に増設された新型コロナ患者用の病棟を担当。2人の医師で30人を診ていた。症状が出たのは連日の夜勤が終わった翌日の今月7日。インドカレーの味がせず、食後も身体が鉛のように重い。過労や運動不足が原因と思ったが就寝後、悪寒、筋肉痛、関節痛で目を覚ました。「壁を伝わないと歩けないほどの倦怠(けんたい)感」を覚え、感染を確信した。翌8日、38度を超える発熱とせきも出たため、職員用の遠隔診療を通じ10日の検査を予約。「体調が悪い上に味覚も失い、食欲も衰えていった」と振り返る。感染は10日に確認され、その後、徐々に症状は改善する一方、11日には嗅覚も影響を受けた。「自分が飲んでいるのがコーヒーかコーラかさえ分からなくなった」
 14日時点でせきなどの症状があり、現在も自宅で自主隔離が続く。「新型コロナウイルスは長引く症状に悩まされる方が多くいる。頭で分かっていても、体験したことがないほど続く悪寒に恐怖を感じた」と話す。新型コロナ患者は比較的軽い症状が約1週間続いた後、容体が急変する可能性もあり、病院では自身と同じ30代で重症化した患者も診ていた。「自分は1人暮らしのため夜間に安否を確認してくれる人がいない。『夜間に呼吸の状態が悪化し、酸欠に陥ったら』と思うと心配で夜もまともに眠れなかった」と語った。
 ◇対策チームが状況把握
 宮下氏が働く病院では、新型コロナの対策チームと現場の職員の間で毎朝ミーティングがあり、対策チームが現場の状況把握に努めているという。例えば酸素マスクを使う患者の酸素状態を確認するのに必要な酸素モニターが不足した際には、要望を伝えたその日のうちに病院が発注。また要望を行うとその翌日に対策チームから対応か未対応かのリストも送られてくる。「パンデミックの際は患者が押し寄せるため、あらゆる資源が不足し、需要と供給の均衡が崩れる。一部に負担がかかり、医療従事者の疲弊につながる」と指摘。「その際に現場が声を上げることができ、病院がすぐに対策を講じることができるフィードバック体制の整備が大切だ」と訴えた。
 日本に対しては、「無症状でも感染している可能性はあり、大切な人にうつす可能性がある。もしその人が高齢者や心臓病、糖尿病などの持病のある人なら、重症化するリスクが何倍にもなる」と警告。「個人個人ができる範囲で常識的な行動を心掛けることが感染拡大を食い止める鍵だ」と強調した。 (C)時事通信社