新型コロナウイルスによる肺炎で死亡した70代男性の遺族が16日までに時事通信の取材に応じ、「『食べ物の味がしないんだ』と塩や梅干しの差し入れを求めたこともあった」と闘病の様子を振り返った。入院中は高熱が続き、「とにかく寒い」と訴えていたという。
 遺族によると、男性は3月に発熱。レントゲン検査で「肺に影がある」と指摘されて入院し、新型ウイルス感染が確認された。
 入院後、面会はできなかったが、毎日の電話は許された。数日後に体調が悪化。熱が下がらず、「とにかく寒い」と訴え続けた。電話もやっとの状態になり、味覚障害が出た。男性には重い基礎疾患があったという。
 抗エイズウイルス(HIV)薬や抗インフルエンザ薬「アビガン」を投与されたが、間もなく人工呼吸器が装着され、会話ができなくなった。呼吸器を着ける日の朝、電話でつぶやいた「大丈夫だよ」が最後の言葉となった。
 直接の対面は認められず、遺族は、集中治療室のガラス越しに男性の最期をみとった。意識はなく、苦しんだ様子もなかったが、遺族は「家族が来ていることも分からずに亡くなった」と目に涙を浮かべた。男性に触れることもできないまま、遺体は専用の袋に収容され、ひつぎに入れられた。
 「一時的にでも自宅に安置したい」との遺族の思いは受け入れられず、男性の遺体は病院から斎場に直接、搬送された。「せめて家の前を通ってほしい」との願いもかなわなかった。
 男性はカメラが趣味で、「あきれるくらいかわいがっていた」という孫の写真をよく撮っていた。幼い孫の一人は、祖父の死を「そんなことないよ」と受け入れられずにいたが、家族が出棺の際、「本当のお別れだからね」と告げると、声を殺して涙を流した。 (C)時事通信社