新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、「岩盤」とも言われる医療の規制に風穴が開いた。政府は対面を原則としていた初診について、感染収束までの措置としてパソコンやタブレットなどオンラインを通じた受診を解禁。院内感染を懸念する現場の声に押され、日頃は強硬な日本医師会(日医)も譲歩を余儀なくされた。
 「今は非常時モードです。その意識を共有していただきたい」。今月初め、首相官邸にほど近い中央合同庁舎を訪れた日医の横倉義武会長に、内閣府幹部はこう迫った。
 話題はオンライン診療の一段の緩和。受診歴のない患者の初診は解禁を認めない立場の横倉氏だったが、いつになく譲らない幹部の姿勢にひとまず矛を収めた。
 オンライン診療は2018年度から公的医療保険が適用されている。ただ、原則として「慢性疾患で3カ月以上の対面診療」を経た場合に限られ、実施病院はごく一部にとどまる。
 高いハードルは「オンラインを広く解禁すれば一部の病院に患者が集まり、医療網が壊れる」(病院関係者)との懸念を反映したものだ。日医は診療報酬などを議論する中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)でも緩和の動きに目を光らせ、この関係者は「普通なら初診解禁は無理だった」と振り返る。
 ◇現場に危機感
 しかし、新型コロナの拡大は止まらない。患者と向き合う医療従事者らから「オンライン初診で感染リスクを下げるべきだ」と切実な声が上がり、政府側にも伝えられた。
 何かと日医の意向をおもんぱかる安倍晋三首相だが、現場の厳しい状況に緩和の検討を指示した。今月2日に設けられた規制改革推進会議の特命タスクフォースは首相官邸の意向を踏まえ、1週間足らずでオンライン初診解禁を打ち出し、政府の正式決定につながった。
 「岩盤」打破を掲げる規制改革会議は「完勝だ」と意気が上がる。「コロナ後」もオンライン初診を続けたい考えで、同会議の小林喜光議長は「これをトリガーに動きだすのではないか」と期待を込める。
 ただ、課題も多い。ある民間調査では今回の緩和を受け、オンライン診療に乗り出すと答えた病院は15%程度。内閣府幹部は「対面の方が安心できる患者も多いはず。どこまで定着するかがカギになる」と話した。 (C)時事通信社