新型コロナウイルスの感染拡大で、治療に不可欠なマスク、防護服、人工呼吸器といった医療・衛生製品の需要が世界的に急増している。各国が確保を急ぐあまり、輸出制限などの「囲い込み」が表面化。20カ国・地域(G20)は首脳会議でこうした措置を「(危機対応の)一時的なものであるべきだ」とけん制したが、感染終息は見通せず、自国優先の動きが拡大する恐れもある。
 新型コロナの重症患者にとって人工呼吸器の不足は生死に直結する。各国が自国製品の輸出制限や在庫確保に走る中、G20首脳は3月下旬のテレビ会議で、医療物資について「最も必要とされるところで、購入可能な価格で広く利用可能」にすべきだと表明。過剰な囲い込みに走らないようくぎを刺した。
 しかし、G20が協調姿勢をアピールした直後、トランプ米大統領は、戦時のように民間企業の物資を統制できる「国防生産法」を用い、医療用マスクなどの輸出制限を発令。周辺国との間にさざ波を立てた。
 日本も4月に入り感染者数が急増し、16日には緊急事態宣言の範囲を全国に広げた。マスク不足は深刻で、人工呼吸器や消毒液、医療用ガウンなどを確保するため、政府は産業界に増産と輸入拡大を要請した。日本企業が強みを持つ消毒液やフェースシールドなども国内での利用を優先する構えだ。
 日本を含む各国の動きは、国民の生命の危機に対処する「不可欠な措置」(外交筋)とされる。ただ、長引けば貿易摩擦などの副作用をもたらしかねない。元米通商代表部(USTR)高官のカトラー氏は「医療製品の輸出を制約すれば、他国から別の必需品を輸入するのは難しくなる」と警告する。
 一方、感染のピークが過ぎたとされる中国は、欧州などに医療製品・検査機器を届ける「マスク外交」を展開。影響力の拡大を狙ったものとみられ、国際社会の警戒感を呼び起こしている。 (C)時事通信社