新型コロナウイルス感染対策として、世界的な急務となっているのが有効なワクチンや治療薬の開発だ。20カ国・地域(G20)首脳会議は「協調」「連携」を打ち出すが、実際にはコロナウイルス対応で対立を深める米中両国を中心とした「競争」が激化している。世界中が新型ウイルスに苦悩を深める中、開発競争の行方は国際社会での主導権争いにも影響する。
 ◇世界初の臨床第2段階に
 世界保健機関(WHO)によると、今月11日時点で計70種のワクチン開発が進行中。テドロスWHO事務局長は利用可能なワクチンが誕生するまでに「少なくとも1年から1年半はかかる」と見通す。
 このうちワクチン開発でリードするのは、世界で最初に感染が拡大した中国だ。新華社電によると、人民解放軍の学術機関、軍事科学院軍事医学研究院のチームは12日、ワクチン候補としては世界で初めて、3段階ある臨床試験のうち第2段階に入った。
 同チームは3月からの第1段階で、湖北省武漢市の非感染者約100人にワクチンを接種して安全性を調査。第2段階では高齢者などの治験者を約500人に増やし効果を調べている。
 一方、米政府は中国先行を警戒する。「米国第一」を掲げるトランプ大統領は3月2日、製薬企業幹部らとの会合で、ワクチン開発に向けた企業間の協力を求めた。米製薬企業ではジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)やモデルナ、ファイザーなどがワクチン開発を推進。特にJ&Jは来年の早い時期の緊急使用に備える方針だ。
 ◇米高官「勝つのはわれわれ」
 中国の習近平国家主席は「ワクチンの共同研究開発を展開したい」と国際協力を唱えるものの、世界的な感染拡大の責任を追及される立場から「救世主」に変わるワクチン開発で先陣を切りたいのが本音だ。中国政府の研究機関・中国工程院の王軍志研究員は3月の記者会見で「ワクチン開発で外国に遅れることはない」と主張。中国メディアには「ワクチンがあれば全世界で中国の影響力を強化でき、主導権を握れる」(ニュースサイト「新浪」)との見方も出ている。
 これに対し、トランプ政権で対中強硬派として知られるナバロ大統領補佐官(医療物資担当)は4月20日のFOXビジネスの番組で「中国が早期に米国(の専門家)を感染地に入れず、データ提供も拒んだのは、ワクチン開発競争のためかもしれない」と指摘。「彼ら(中国政府)は(ウイルス対策を)単なる商売上の競争と考え、世界中にワクチンを売ろうとしているのだろうが、勝つのはわれわれだ」と、ライバル意識を強めている。
 ◇国際協調主導狙うEU
 欧州ではドイツがリードする。有望視される独バイオ医薬品企業キュアバックは、今秋にもワクチンを供給できるとの見通しを示している。しかし同社をめぐっては3月、トランプ政権が多額の資金を提供する代わりに、ワクチンを独占しようと画策したとの疑惑が浮上。ドイツをはじめ欧州の当局は技術流出に神経をとがらせており、欧州連合(EU)が同社への8000万ユーロ(約93億円)の資金提供を決めるなど「囲い込み」の動きも広がっている。
 EUは、ワクチンや治療薬の実用化を急ぐため、臨床試験から販売承認までの手続き迅速化を進める。欧州医薬品庁(EMA)は、ワクチンが承認され十分な量を確保できるまで「1年かかる」と見込むが、フォンデアライエン欧州委員長は年末への実現前倒しに期待を示している。
 EUは国際協調を主導する姿勢も見せる。トランプ氏がWHOへの資金拠出停止を発表した翌日の今月15日、ワクチン開発や世界各国への配備を支援する資金を募るための国際会議を5月4日にオンラインで開催すると表明。フォンデアライエン氏は、WHOや米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏の財団などと協力するとし、「世界中の国々や機関が呼び掛けに応じることを願っている」と訴えた。(北京、ワシントン、ベルリン、ブリュッセル時事)。 (C)時事通信社