【ニューデリー時事】13億超の人口を抱えるインドでも新型コロナウイルスの感染が深刻化しており、「全土封鎖」状態になって1カ月が過ぎた。こうした中、経済活動が停止になり失職した12歳の出稼ぎ少女が、帰郷しようと約150キロ歩いた末に命が尽きた悲劇は、社会に大きな衝撃を与えた。徹底した外出禁止など感染防止措置のしわ寄せは、人口の多くを占める貧困層に集中。モディ首相が貧困層対策で謝罪する事態にまで発展した。
 ◇失職し帰郷の途中に
 民放NDTVなどによると、南部テランガナ州のトウガラシ農園で出稼ぎをしていたジャムロ・マクダムさん(12)は15日、故郷のチャッティスガル州に向け歩きだした。職を失い帰郷せざるを得なくなったとみられる。日中の気温は30度を超えるが、公共交通機関も止まる中、徒歩しか選択肢はなかった。
 インド政府は3月25日から感染防止のため全土で徹底した外出禁止措置を取っている。外出が見つかり捕まれば、棒でたたかれるなどの罰が待っており、帰郷もできなくなる。マクダムさんは検問を避けるため、一緒に出稼ぎに来ていた親族らと森を切り開きながら約150キロ歩いたが、自宅までは残りあと15キロ足らずの地点で力尽き、息絶えた。
 父のアンドラムさんはNDTVに対し「3日間歩き続けていた」と話した。死因は脱水症状と栄養失調とみられている。マクダムさんは「1日に最大で400ルピー(約560円)程度を稼ぎ、ほとんどを家族に送金していた」(英BBC放送)とされ、新型コロナを契機に貧困層の悲惨な現実も改めてクローズアップされている。
 ◇「私を許して」と首相
 インドではそれに先立つ3月29日、経済活動の停止のあおりで失職し、首都ニューデリーから帰郷する途中の出稼ぎ労働者の男性が、約200キロ歩いた末に死亡した、と伝えられた。このほかにも、公共交通機関が動かないため、数百キロを歩いて故郷を目指す人たちが相次いでいる。
 背景には、人口の6割が住む農村部で職が見つからないため、貧困層が短期労働者として都市などで出稼ぎを迫られている現実がある。貧困層は政府調査では2割強だが、実態は6割近くに上るという見方もある。
 外出禁止措置を受け、ニューデリーなどでは、当局が食料を配布し、滞在場所となるシェルターを用意するなどの対策を取っているが、十分には周知されていないもようだ。テランガナ州でも出稼ぎ労働者に対して米、小麦を配給しているが、マクダムさんには届かなかった可能性がある。
 モディ首相は3月29日の演説で、貧困層対策が不十分と認め、「私を許してほしい」と謝罪。対策を急ぐ考えを示したが、今月28日までに2万9000人超が感染し、930人超が死亡する中、感染拡大の防止が貧困層に及ぼすしわ寄せの厳しさに苦悩している。 (C)時事通信社