【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)は夏のバカンスを控え、新型コロナウイルスの感染再拡大の防止と観光再開の両立という大きな課題に直面している。観光依存度の高い南欧諸国を中心に早期対応を求める声が強いが、慎重論も残る。
 EUにとって観光は約2700万人の雇用を支え、GDP(域内総生産)の約1割を占める重要産業。しかし、コロナ対策で各国が導入した国境封鎖や外出規制などの制限措置で、宿泊や渡航キャンセルが相次ぎ影響は深刻化しつつある。
 欧州委員会のフォンデアライエン委員長は当初、感染封じ込めを重視し市民に夏の計画を控えるよう訴えていたが、「スマートな解決策」なら可能だと方針を転換。13日にも具体案を示す方向で検討している。
 加盟国間で浮上しているのが、自国出発前に検査し感染リスクがないことが確認された人に「健康パスポート」などと呼ばれる証明書を出し、渡航を認める案だ。GDPの2割を占める観光の再開が死活問題となっているギリシャなどが導入を求めている。
 感染が収束した国同士だけで往来を認める旅行者の「回廊」構想を掲げる国もある。オーストリアのケスティンガー観光相は地元紙に「ドイツなどとは合意できる」と主張する。
 ただ、EU内での差別につながる懸念があるほか、「今夏に普通の休暇はあり得ない」(マース独外相)などと早期の封鎖解除には慎重論も根強い。感染者が欧州最多のスペインでは、ディアス労相が観光を年末まで再開しない方針を示したとも報じられている。
 イタリアのコンテ首相は国内で休暇を過ごすよう促す姿勢とされ、他の多くの国でも今夏の長期休暇は国内旅行が中心となりそうだ。
 一方、EUによる第三国からの原則入域禁止の解除は、こうしたEU内の問題が解決した後になるとみられている。日本など域外からの欧州旅行は当面難しそうだ。 (C)時事通信社