数少なくなったジャズ喫茶の中でも、根強いファンが足しげく通うことで知られる東京・四谷の老舗「いーぐる」が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で経営危機に直面している。
 4月下旬の平日、午後7時。普段なら大勢の客でにぎわう店内は、ひっそりと静まり返っていた。「JBL」の大きなスピーカーから流れる心地よい音に耳を傾けていた唯一の男性客も、20分後には店を後にした。
 通常であれば日が変わる直前まで営業しているが、営業自粛要請を受け、同8時には新たな客が訪れることもなく閉店。店主の後藤雅洋さん(72)は「他もそうだろうけど、見ての通り。ひどい状態です」と嘆く。
 店を開いたのは、後藤さんが慶応大の学生だった1967年。ジャズ喫茶ではなかったものの、喫茶店とバーを経営していた父親から「そろそろ、お前も店を構えてみろ」と言われ、当時はあまり興味がなかったジャズ専門の喫茶店を四谷で開業した。
 それから52年余り。先日、休業協力金50万円の申請書類を提出したが、「2月ごろから減り始めた売り上げは今月に入って8割減となった。でも、アルバイトの学生たちにはそのまま働いてもらっている。家賃も含めると、協力金を受け取っても1カ月分だけで足が出る」と後藤さん。
 さらに、クラスター(感染者集団)を出したことなどから、営業ができなくなっているライブハウスが多い中、「首になりました。働かせてもらえませんか」と訪ねて来た若者を採用したという。
 後藤さんは「感染拡大を食い止めることは大事だが、このままだと経済全体が駄目になり、自殺者が増えてしまわないか心配だ」と話した。
 いーぐるのホームページでは、オリジナルTシャツや後藤さんの著書、プリペイドチケットなどを販売しており、後藤さんは「協力していただければ、この上なく助かる」と話している。 (C)時事通信社