【ワシントン時事】新型コロナウイルスの危機が続く米国で、郵便投票の実施を求める世論が高まっている。11月3日の大統領選で、有権者や職員の安全を確保しながら投票を実施するのは困難になる可能性があるためだ。既に全ての選挙で郵便投票を実施する先進州もあり、各州で導入に向けた動きが広がる。
 4月7日に行われたウィスコンシン州予備選は「投票権を取るか健康を取るかの選択」(市民団体)と強い批判を招いた。ミルウォーキーでは職員の不足から5カ所の投票所しか開けず、マスクを着けた有権者が間隔を取って長蛇の列をつくった。この予備選と関連する可能性がある感染者は50人を超えている。
 NBCテレビの4月の世論調査では、67%が大統領選での郵便投票導入を支持。全有権者を対象に既に導入しているオレゴン、ワシントンなど5州に加え、カリフォルニア州も11月の完全実施を目指す。連邦議会でも民主党が「不可欠の課題」(ペロシ下院議長)として導入支援に動く。
 導入には不正投票防止が前提になるが、20年の郵便投票の歴史があるオレゴン州は多くの安全策を講じていると主張する。同州の制度に詳しいオレゴン大のプリシラ・サウスウェル教授は「不正は非常にまれ」と話す。
 同州では投票日3週間前になると自動的に投票用紙が送られてくる。有権者は記入した投票用紙を内封筒に入れ、外側の封筒に署名をして投函(とうかん)。選管では登録された署名と外封筒の署名が一致するかがチェックされ、不審な点があれば連絡が来る。過去に不正と認定された投票は十数件にとどまるという。
 一方で政治的なハードルもある。都市部に住む若者や人種的少数派の投票率が上がり、民主党に有利になるという主張が根強い。スタンフォード大の最近の研究は「共和、民主のどちらかに有利になることはない」と結論付けた。しかし、トランプ大統領は3月、郵便投票を全面的に認めれば「共和党に害を及ぼす。この国で二度と勝てなくなる」と反対論を唱えている。
 サウスウェル教授は「トランプ氏の反対にもかかわらず、共和、民主両党の多くの知事が導入に前向きな考えを示している」と指摘。11月の選挙で郵便投票を導入する州が相次ぐと予測している。 (C)時事通信社