亡くなった人の死因を調べる全国の大学の法医学教室などが今年1月以降に扱った遺体で、新型コロナウイルス感染の有無を調べる検査を保健所に拒否される事例が相次いでいる。独自に検査を始めた大学もあるが、法医学者は「遺体でも感染の有無は重要な情報で、検査を徹底する体制を国が整備すべきだ」と指摘する。
 日本法医病理学会は4月、全国約80の大学や機関に所属する法医学者らにアンケート調査を実施。26機関が回答し、1月下旬以降、保健所に依頼した遺体のPCR検査を断られた事例が12件あることが分かった。
 ある機関では4月上旬、自宅で死亡していた1人暮らしの70代男性を解剖した。関係者の証言で、男性は数日前から微熱があったことが判明したため、新型コロナへの感染を疑い保健所に相談したところ、「(感染者への)濃厚接触が明確でないため検査対象ではない」と拒否された。
 別の機関では同月上旬、院内で複数の感染者が出た病院に入院し、死亡した30代男性を解剖。死因が新型コロナである可能性は低かったが、遺体と接触した関係者への感染拡大を懸念して保健所に検査を依頼したが、断られた。
 一方、依頼を受け保健所などが検査したケースも11件あった。死後のコンピューター断層撮影(CT)検査で肺炎が疑われた男性などで、すべて陰性だったという。
 こうした事態を受け、千葉大や和歌山県立医科大、長崎大は法医学教室で独自にPCR検査を始めた。
 日本法医病理学会理事長で和歌山県立医科大の近藤稔和教授は「亡くなった人が陽性の場合は生前の情報を感染拡大の防止に活用でき、陰性でも接触者は安心できる。遺体の検査体制を整えるべきだ」と話した。 (C)時事通信社