【ワシントン時事】米国に広がる新型コロナウイルス感染が、先住民居留地を直撃している。貧弱な医療体制を背景に、感染者や死者の比率は全米平均を大きく上回る。苦境に直面する先住民救済を呼び掛ける声が国内外に広がり、連邦政府も支援に本腰を入れ始めた。
 アリゾナ、ユタ、ニューメキシコの3州にまたがる先住民ナバホ族の居留地「ナバホ・ネーション」。居留地自治政府によると、人口約17万5000人のうち、7日時点で2700人以上の感染が確認され、88人が死亡した。人口当たりでは全米平均をはるかに超える。
 背景には、居留地内に医療機関が少なく、持病を抱える住民も多いため、感染後に重篤化しやすいという環境がある。居留地政府のネズ首長はロイター通信に「疾病対策センター(CDC)や専門家たちは(感染防止のため)手を洗えと言うが、水道を使えない住民もいる」とインフラ整備の遅れを嘆く。
 ナバホ族の支援団体「プロテクト・ザ・セークリッド」は、居留地への支援を呼び掛ける動画を公開。俳優マーク・ラファロさんやコメディアンのエレン・デジェネレスさんが、居留地の医療関係者増員などを訴えた。
 米ABCニュースによれば、国内芸能人らの活動とは別に、アイルランドからも飲料水や食料、マスクなどの購入用に260万ドル(約2億8000万円)の寄付が寄せられた。19世紀にアイルランドが飢餓に見舞われた際、米先住民から義援金が送られたことへの「返礼」という。
 こうした動きに歩調を合わせるように、5日にアリゾナ州を訪れたトランプ大統領は現地関係者との会合で、先に署名した新型コロナ対策に80億ドル(約8500億円)の先住民支援が盛り込まれたと説明。先住民の自治体への支援としては「過去最大だ」と誇示し、うち6億ドル(約640億円)をナバホ・ネーションに振り向けることを明らかにした。 (C)時事通信社