新型コロナウイルス感染拡大の影響で、自殺者の急増が懸念されている。経済的困窮や不安を訴える人が増える一方、心の悩みの相談に応じる団体の多くが感染対策で活動を休止、縮小しているためだ。国は、対面での相談自粛とともに電話、SNSの積極活用を呼び掛けるが、人員や設備面の課題も多く、支援を求める声も上がる。
 約50年前から自殺予防に取り組む「日本いのちの電話連盟」は、加盟52団体の約4分の1が活動を休止中。他の団体でも休止が相次ぎ、受付時間や相談日を減らした所も多い。電話やSNSでも通常複数で連携して対応することから、プライバシー保護のための個室内は「3密」になりやすい上、通勤時の感染リスクや家族の事情で相談員の確保が難しいことが主な原因という。
 年間約1万人の電話相談を受ける「東京自殺防止センター」も6日から相談を中止。中山町子所長は「22年の歴史で初の事態だ。相談者の不安を思うと罪悪感ばかりだが、万一のことがあれば活動が続けられなくなる」と胸の内を明かす。
 相談員の高齢化や設備面の課題から、事務所での電話対応以外は難しいといい、1人シフト化や当直室の利用中止などの策を講じ、早期再開を模索する。中山所長は「相談員は全員ボランティア。マイカーやタクシーでの通勤や宿泊費に補助があれば体制が組みやすい」と行政の支援を訴えた。
 一方、自殺防止に取り組むNPO法人「ライフリンク」の清水康之代表によると、SNSによる相談は利用者が若年層に偏るほか、通信環境や運用ノウハウがない団体が多いなどの難点がある。
 同法人はSNS相談のリモートワーク化を進めるが、人員の確保に苦心している。個室や専用パソコンの使用などを誓約できる相談員に限ったためだ。自宅で一人で応対する心理的負担の増加も懸念されるという。清水氏は「相談は日々増えており、1998年の金融危機で自殺者が急増した状況の再来が懸念される。早急な体制整備が必要」と話した。
 清水氏が代表理事を務める「いのち支える自殺対策推進センター」の緊急調査では、4月末時点で回答した55団体の8割超が活動の休止や制限をしており、再開に向けては▽感染防止策などの情報提供(60.4%)▽転送電話やネット機器導入の資金援助(52.1%)▽マスクなどの物資提供(45.8%)―といった支援要望が多かったという。 (C)時事通信社