新型コロナウイルスで提唱される密閉、密集、密接の「3密」の回避が、薬物やアルコール依存者を苦しめている。「孤立の病」と言われる依存症回復の支えである、他者とつながる機会が感染防止で失われつつあるためだ。立ち直りの手段を確保しようとオンラインを活用する動きも出始めた。
 依存症からの回復を支援する「日本ダルク」(東京都新宿区)の職員で、元依存者の井上智義さん(53)は「ミーティングは回復の原点だ」と話す。施設入所者約30人は、感染防止策を徹底しながら1日2回、体験談や本音を語るミーティングをしているが、「感染者が出たらできなくなる」と危機感を募らせる。
 薬物依存者の自助グループ「ナルコティクス・アノニマス(NA)」によると、ミーティングは3月から徐々に減少。緊急事態宣言以降は、会場の公民館などの施設が使えず、ほとんどが中止に追い込まれた。
 危機的状況を乗り越えようと、インターネットを通じたオンラインミーティングが広がっている。NAやNPO法人「アスク」などがホームページなどで、オンラインミーティングをリスト化し、活用を呼び掛けている。情報サイト「とどけるプロジェクト」は、非公開と公開の形式を比較しながら運営のポイントを紹介している。
 ある薬物依存症の男性は「オンラインでも会えたことは良かった。新しいことをするのにためらいや困惑はあったが、助かった」と話した。
 国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦薬物依存研究部長は「薬物やアルコールをやめ続けるために、ミーティングは大事な場だ。できる人だけでもオンラインでつながってほしい」と指摘する。
 ただ、オンラインも万能ではない。体験を共有する仲間に「薬やりたい」と言ってみるだけで気持ちは発散できるが、隣に家族がいれば本音を言い出しにくい。松本部長は「段階的にでも自助グループが活動できるような場を解禁していってもらいたい」と行政に注文した。 (C)時事通信社