【ワシントン時事】12日行われた米上院委員会の新型コロナウイルス対策に関する公聴会で、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長は、トランプ大統領が旗を振る経済再開について警鐘を鳴らした。再開の先陣を切った州で感染者や死者数が増加している例もあり、科学を軽視した政治主導の制限緩和に危機感を抱いたもようだ。
 「ちょっとした感染者の増加が感染爆発につながる。前進でなく後退してしまう可能性もある」。ファウチ氏はトランプ氏を刺激する発言を避けつつも、明快に意見を開陳した。ニューヨーク株式市場では「第2波」の警戒から株価が下がり、影響力の強さをうかがわせた。
 ただ、政権内でのファウチ氏の発言力は小さくなっている。政府対策本部は4月中旬、「最近2週間の新規感染者の減少」など、経済再開へ各州がクリアすべき基準をまとめた。しかし、基準を満たさないまま規制を緩和する州が相次ぎ、トランプ氏もそうした州の知事をあからさまに支援。各州では、科学的知見ではなく政治を意識した経済再開の動きが進んでいる。
 さらにトランプ氏には、専門家を極力遠ざけようという思惑が見え隠れする。ファウチ氏の国民への発信の機会だった政府対策本部の記者会見は4月下旬以降開かれなくなり、トランプ氏は最近対策本部の権限縮小も口にした。
 テキサス、アラバマ両州などでは、経済再開後に感染者や死者の増加が見られる。一方、外出自粛措置を2カ月近く続けても事態が収束に向かわない状況は多くの人にとって想定外で、科学的な意見を受け入れる「限界」も指摘される。ファウチ氏の公聴会発言に対しては、トランプ氏に近い共和党のポール議員から「あなたは(政策の)最終決定権者ではない」とけん制する声も上がった。 (C)時事通信社