日本では14日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が39県で解除され、「第2波」を抑えつつ、経済社会活動を段階的に再開させる局面に入る。制限緩和で先行する世界の「明」と「暗」を分けるものは何か。政府と国民の信頼・協力が強ければ順調に進み、一瞬でも「緩み」は禁物だ。アジア太平洋地域の現状を報告する。
 ◇プロ野球観客増の台湾
 新型コロナの震源地・中国に近いにもかかわらず、感染対策で世界的に評価される台湾。蔡英文総統の下、政府と民間による徹底した対策が奏功し、海外ルート以外の新規感染者は1カ月以上、ゼロが続く。5月から出口戦略を本格化している。
 8日から1000人の人数制限を設けて公式戦の観客入場を再開した台湾プロ野球は15日、上限を2000人に増やす。観客に義務付けるマスク着用や社会的距離確保といった対策が適切に実行されていると、当局が判断したからだ。
 他の国とは海を隔てる地理的な条件を生かしたのがオーストラリアとニュージーランド(NZ)だ。3月中に事実上の「鎖国」に入り、感染の封じ込めに成功した。特にNZではソーシャルメディアを駆使して協力を呼び掛けるアーダーン首相の姿勢が国民の安心感につながった。台湾とNZに共通するのは、女性リーダーへの市民の高い信頼だ。
 ベトナムも発生当初から死者ゼロが続く。4月23日の制限緩和開始後、帰国者を除き国内での新規感染者は出ていない。共産党一党支配で当初から厳格な対策を取り、感染が抑制された結果、国民の安心感や政策の支持に直結した。
 これら順調な国・地域は「第2波」に警戒しながら難題に取り組むことになる。台湾は市民の外出自粛で経済が大きな打撃を受け、感染対策を前提に外食・旅行の再開を呼び掛ける。ベトナムでは外国人の入国禁止が外資系企業などの活動に影響を及ぼし、海外の需要も落ち込んだため、経済の回復が優先だ。南半球に位置する豪州・NZではこれから冬本番を迎え、警戒を緩められない。
 ◇集団感染に悩む韓国
 一方、台湾とともに成功例といわれた韓国だが、「第2波」に悩まされている。4月末に国内発生の新規感染者が約2カ月半ぶりにゼロとなったが、今月6日に20代男性の感染を確認。男性は2日、ソウルの繁華街、梨泰院にあるクラブ3カ所を訪れていた。クラブ客の間で集団感染が発生し、その家族や同僚らにも拡散。14日正午現在、関連する感染者は計130人を超えた。
 韓国政府は感染抑制に伴い4月20日から外出や集会制限を一部緩和し、クラブなど遊興施設の運営も「中断」から「自粛」に勧告レベルを変更。マスク着用などの防疫指針を順守した上での運営を容認した。
 しかしクラブ内でマスク着用などの指針が守られず、制限緩和が集団感染を招いた可能性が指摘されている。ソウル市は9日になって市内の遊興施設を対象に集合禁止命令を出し、事実上の運営中断を指示。丁世均首相は13日、クラブ側が提出した名簿の大半が虚偽の内容で「今回の事例は防疫網の不備を露呈した」と反省点を指摘した。
 ◇スマホ認証で警戒の中国
 最初に感染拡大した武漢市(湖北省)の封鎖解除から1カ月以上がたった中国でもなお警戒が続く。「経済目標の実現」を強調する習近平指導部の下、全国で企業活動が再開された。今では都市部で渋滞も起き、飲食店にも客足が戻ってきた。
 しかし5月に入り吉林省舒蘭市や武漢で集団感染が発生。「第2波」を抑え込むため、舒蘭では列車の運行を停止するなど移動規制が行われ、武漢では全市民を対象に感染の有無を調べるPCR検査を実施している。
 北京市でも警戒は続き、ほとんどの人が外出時にマスクを着用。店舗に入る前に体温検査が行われ、健康状態を判定するスマートフォンのアプリによる認証が必要な場合が多い。市民からは「感染が収まったとはいえ、第2波は怖い。防止策は必要」という声が聞こえる。 (C)時事通信社