人口が13億人を超えるインドで、5月に入っても新型コロナウイルスの感染拡大が衰えない。モディ政権は、3月末から厳しい全土封鎖で感染防止を図ってきたが、4月20日以降は経済への影響を考慮し、段階的に規制を緩和した。しかし、感染者は増えてしまい、緩和に伴う社会の「緩み」が影響した可能性が懸念されている。感染者の累計は今や8万人を超え、中国に並ぶ水準となった。政府はたがを締め直そうと躍起になっている。
 ◇1日4000人
 24時間ごとに集計されてきたインドの新規感染確認者数は、4月後半は1000人台で推移してきた。これが5月に入ると3000人台へ増え、今週に入って4000人を超える日が現れた。
 政府は9日の声明で「検査能力を1日9万5000件まで増やした」と主張。検査数が増えたことで感染者の判明数も増加したことを示唆したが、封鎖措置が1カ月半も続く中で感染者が増え続けていることへの説明はない。
 3月25日に始まった全土封鎖の初期段階では、生活必需品購入といった必要最低限の用件以外で外出した市民を警官が棒で殴り付けるといった厳しい規制が敷かれた。市民も自主的に外出を制限し、近隣住民と監視し合うほどだった。
 一方、長引く封鎖が膨大な貧困層の暮らしに与える経済的打撃は深刻だ。4月20日以降は、感染者の少ない地域の工場の操業や、大規模商業施設を除く店舗の営業再開も許可した。5月4日には、出勤人数を抑えた上で多くの事業所が始動できるようになった。
 不要不急の外出への規制は続いているものの、首都ニューデリーでは4月末ごろから街中で所在なげにたたずんでいる人の姿が明らかに増えた。ニューデリー在住の運転手の男性(33)は「人々の雰囲気が緩んだと感じる」と不安を口にした。
 ◇「自立」の訴え
 政府はこうした傾向を問題視。モディ首相は12日の演説で「前例のない危機下では、われわれ自身を救わなければならない。自己中心的にならず、自立しなければならない」と国民に再度、自制を呼び掛けた。
 インドでは7日以降、海外に取り残されたインド人を帰国させるための航空便が飛び始めた。また12日には、大都市周辺で働いていたものの、封鎖措置で職を失った出稼ぎ労働者を帰郷させるため臨時列車の運行も始まった。こうした移動の解禁は、感染をさらに広げかねない。モディ首相は、不要な外出や人との接触といった「緩み」を戒めている。
 民放NDTVは8日、「インドの感染のピークは7月終わりごろになる」と予測した世界保健機関(WHO)の専門家とのインタビューを放映した。封鎖の期限は今月17日だが、政府はそれ以降も継続する準備に入った。しかし、一度始まった国民の「緩み」を止める妙案は「自立」以外になさそうだ。 (C)時事通信社