【モスクワ時事】新型コロナウイルスの感染者数の累計が米国に次いで多いロシアで、プーチン大統領が4月に約束した医療従事者への特別手当の支給が遅れている。不満を募らせた医療従事者が給与明細の写真をメディアで公開し、新型コロナをめぐるプーチン体制のほころびがまた一つ明らかになった。ミシュスチン首相は13日、支給の遅れを認め、信頼回復を急ぐ構えだ。
 プーチン氏は4月8日、医療従事者らは「絶え間なく自らの健康を危険にさらしている」と述べ、新型コロナ感染者と接触する医師に月8万ルーブル(約11万6000円)、看護師や救急隊員には月2万5000~5万ルーブル(約3万6000~7万2000円)の特別手当を4月から3カ月間支給すると表明した。
 しかし、独立系メディアが4月下旬から特別手当未払いに関する医療従事者の告発を伝え始めた。モスクワの女性看護師は「2昼夜、時には3昼夜連続で勤務することもあった」が「4月の給与は2万6000ルーブル(約3万8000円)で、手当はなかった」と訴えた。また、ノーバヤ・ガゼータ紙は今月13日、第2の都市サンクトペテルブルクで新型コロナ感染者の治療に当たった医師の4月分の給与明細の写真を公開。給与額は約4万4000ルーブル(約6万4000円)だった。
 ミシュスチン氏は13日の閣僚らとのテレビ会議で、医療従事者の特別手当のために総額約275億ルーブル(約400億円)の予算が地方に配分されたが、「執行されたのは約45億ルーブル(約65億円)にとどまる」と説明。「感染が深刻で医療従事者が負担を強いられている地方でもこうした問題が起きている」と失態を認めた。
 ロシアでは防護服の不足などにより医療従事者が過酷な状況で勤務していると伝えられる。一部の医師らが独自に開設したサイトによれば、新型コロナの感染拡大後、ロシアで死亡した医療従事者は180人を超えている。
 また、ロシアは感染者数が累計で26万人を超えたにもかかわらず、死者数は約2400人と欧米諸国に比べ死亡率が著しく低い。英紙フィナンシャル・タイムズや米紙ニューヨーク・タイムズがロシア政府の発表を疑問視する報道を行ったが、ロシア外務省は2紙に訂正を要求した。死者数をめぐる報道にプーチン政権が神経をとがらせている様子がうかがえる。 (C)時事通信社