【サンパウロ時事】新型コロナウイルスの感染拡大の中心地となりつつあるブラジルで、防疫のため独自に経済規制措置を取る各州知事らと、雇用を重視して緩和を求めるボルソナロ大統領の対立が深まっている。史上最悪の景気後退は避けられないとの見方が強まる中、ボルソナロ氏は対決姿勢を強め、知事らとの「戦争」まで宣言した。
 保健省の16日の発表によると、ブラジルの新型コロナ感染者の累計は前日比1万4919人増の23万3142人、死者は同816人増の1万5633人。感染者数はスペインとイタリアを抜いて世界4番目となった。
 ただ、ボルソナロ氏が感染阻止にかじを切る兆候はない。16日にはツイッターに「完全隔離という暴政の支持者を待っているのは、失業と飢餓、貧困だ」と投稿し、知事らを攻撃。14日にも経済の中心地サンパウロ州のドリア知事を名指しし「一人の男(ドリア氏)がブラジル経済の将来を決めている。必死に戦わなければならない。戦争だ」と述べ、圧力を高めるよう企業家らに訴えた。
 連邦制を敷くブラジルでは、営業規制を含む保健衛生対策は州などの仕事で、連邦政府は横やりを入れることはできない。新型コロナを「ちょっとした風邪」と軽んじるボルソナロ氏は、各州が命じている商業活動などの規制を「犯罪行為だ」と主張し、一貫して緩和を求めてきた。
 これに対し、各州や市の首長も屈する様子は見せない。ボルソナロ氏は13日、大統領令で規制の除外対象となる「不可欠な経済活動」にスポーツジムや美容室を指定して再開を要求したが、全27州・直轄区のうち、少なくとも18州・直轄区は一蹴した。ドリア氏は15日の会見で、「大統領、国を混乱と終わりのない争い、不和に陥れるのはやめなさい」とボルソナロ氏をいさめた。
 ブラジルでは4月の失業手当申請は前月比4割増となり、非正規労働者への600レアル(約1万1000円)の給付金窓口には徹夜の列ができている。世論調査では各州が講じている規制を7割が支持しているが、黄熱病など伝染病との闘いに慣れている国民の間で規制緩和を求める声が広がっているのも事実。大都市では外出自粛要請を無視した大統領支持のデモが増え始めている。 (C)時事通信社