【ロンドン時事】英キングス・カレッジ・ロンドンで公衆衛生研究所長を務める渋谷健司教授は18日までにインタビューに応じた。日本の新型コロナウイルス感染対策について「爆発的な感染増加を抑えることはできたが、第2波は必ず来る」と述べ、ウイルスとの長期の闘いを念頭に、医療や検査体制の充実が不可欠だとの考えを強調した。主なやりとりは次の通り。
 ―欧米に比べ日本の感染者、死者は少ないが。
 最初期にクラスター対策を頑張った。市中感染が広がり指数関数的増加に入った直後に、国民の自粛努力、緊急事態宣言で感染者が欧米のように爆発的に増えるのを抑えることはできた。日本人はもともとマスクを使う習慣があったり、あまり握手をしなかったりといった点もプラスに働いたかもしれないが、社会的距離を取ることの重要性が改めて示された。日本がこれでうまく乗り切ったと考えるのは禁物だ。そういう印象を持つと、感染の次の波が来た時に危険だ。このウイルスとの闘いは本当に長期戦で、野球に例えると1回の表裏が終わったぐらいでしかない。
 ―改善すべき点は。
 患者の急増時に耐えられる医療体制と、検査対象者を広げ、感染動向のモニタリングを強化することだ。日本はクラスター対策でせっかく時間を稼いだのに医療体制や検査が十分ではない。重症者の検査にリソースを投入するのは、そのこと自体は正しい。ただ、この病気の一番の問題は無症状や軽症の人がそれと知らずに周りに拡散してしまうことであり、病院や介護施設での被害が広がった。それを防ぐためには検査の網の目を広げ、感染者を把握し、隔離する方向に転換していく必要がある。
 企業もできることはやらないと社会が回らない。例えば、従業員に定期的に検査を受けてもらう方法がある。検査は唾液を検体にして自宅でもできるようになる。
 ―英国は死者約3万4000人と深刻だ。
 初動の遅れが事態悪化の決定的な要因だ。2月から3月初旬にかけてイタリアなどでかなり被害が広がっていたにもかかわらず、検査をはじめとする体制整備が遅れた。政府は3月12日、多くの国民に自然感染させ、集団免疫を獲得する戦略を打ち出したが、その時点では被害予想を過小評価しイタリアなどでの爆発的感染拡大を「対岸の火事」的に見ていたように思える。ロックダウン(都市封鎖)に乗り出したのは3月23日になってからだ。英国は6週間ほど時間を浪費したといえる。
 ◇渋谷健司氏略歴
 渋谷 健司氏 91年東京大医学部卒。帝京大市原病院医師などを経て94年より米ハーバード大リサーチ・フェロー。08年に東京大大学院教授(国際保健政策学)。19年4月、キングス・カレッジ・ロンドン公衆衛生研究所の開設にともない所長就任(教授)。19年から世界保健機関(WHO)事務局長上級顧問。 (C)時事通信社