【ロンドン時事】英インペリアル・カレッジ・ロンドンで免疫制御などを研究する小野昌弘准教授は21日までにインタビューに応じた。各国で総力を挙げた開発が続く新型コロナウイルスのワクチンについて「感染や重症化を実際に防げるかどうかの検証が今後の焦点だ」と述べた。米製薬会社は今週、抗体の発現で好結果を得たとする初期の臨床試験結果を発表した。小野氏は開発の正念場はこれからだとの認識を示し、過度の期待を戒めた。主なやりとりは次の通り。
 ―ワクチン開発の基本的目標、開発の現状は。
 基本目標はウイルスに対する中和抗体を誘導でき、かつ安全性の高いワクチンを開発することだ。英オックスフォード大のグループが先行している。そこで開発中のワクチンはアデノウイルスの一種を体内で増えないように改造したもので、現在、安全性確認のための第1相臨床試験を実施中だ。
 新型コロナウイルスは人の細胞に感染する際の足掛かりとして、ウイルス表面にある突起状のスパイクたんぱく質を使う。オ大のワクチンはこのたんぱく質の遺伝子を組み込んだ「運び屋」となる。接種後、体内にスパイクたんぱく質が発現すると、それに対する中和抗体が作られ、感染を阻害する仕組みだ。他に開発中のワクチンの多くもスパイクたんぱく質を利用している。
 ―オ大が先行しているとは具体的には。
 グループはこれまでに、今回と同様の手法で中東呼吸器症候群(MERS)のワクチン開発を行っている。(コロナウイルスの一種である)MERSは新型コロナウイルスによく似ている。英国ではまだ感染流行中のため、この臨床試験でワクチンの効果確認もできる点は重要だ。試験に参加した人の中にはウイルスに接触する人が出てくるだろう。接種で感染を防げるか、重症化を回避できるかを、接種した人としなかった人を統計的に比較して調べる。感染者が大きく減った中国では難しい。
 ―米製薬会社モデルナは初期臨床試験で被験者に回復患者と同水準以上の抗体が確認されたと発表したが。
 特に驚きではない。問題はそれ(抗体)が本当に(ウイルスに対する)防御を担ってくれるかどうかだ。予想外の事が起きず、しっかりと防御免疫を誘導できることを確認せねばならない。可能性は低いが、ワクチンを打ったことによって逆に感染を促進してしまう「抗体依存性悪化」が起きない確認も必要だ。これらすべてをクリアできたワクチンが広く使われることになる。
 ◇小野昌弘氏略歴
 小野昌弘氏 99年京都大医学部卒。皮膚科医として研修後、免疫学の研究を始める。06年同大学院博士課程修了後、京都大や大阪大で助教。09年にユニバーシティー・カレッジ・ロンドンに移籍。13年、主任研究者として自身の研究室立ち上げ。15年よりインペリアル・カレッジ・ロンドン准教授。T細胞と免疫制御が専門。 (C)時事通信社