日本政府は25日、休業・外出自粛要請の根拠となってきた緊急事態宣言を全面解除した。ただ、観光を含む経済活動を完全に再開させるには、「新しい生活様式」に合わせ、国境を越えた人の移動の容認が不可欠。新型コロナウイルスの爆発的感染拡大を経験した中韓両国や欧州は、試行錯誤しながら一歩を踏み出している。
 ◇自主隔離免除の新制度
 中韓両政府は4月末、新型コロナ対策で厳格化された入国手続きを、企業関係者に限り簡素化する制度の新設で合意。中国の地方政府の許可を受けた韓国企業関係者は5月から、PCR検査の受診などを条件に中国入国後2週間の自主隔離を免除されることになった。
 「新たな成長エンジンを生み出すため、巨大な変化に先んじて備えるべきだ」。韓国サムスングループを率いるサムスン電子の李在鎔副会長は5月中旬、新制度を活用して中国陝西省西安市の自社工場を訪問し、こう語った。工場は同社が韓国外に設けた唯一の半導体メモリー生産拠点。李氏は現地従業員を激励し、新型コロナ対応を急ぐ考えを示した。
 感染の早期封じ込めに成功しつつある文在寅政権は、早い段階から収束後を見据え、布石を打っていた。制度の運用開始後、22日までに1200人を超える韓国企業関係者が中国入り。中韓両首脳は13日の電話会談で、制度について「協力の模範事例」だと称賛した。
 もっとも、中韓でも感染の「第2波」は現実のものとなっており、本格的な観光客の往来再開までは見通せない。文政権は、長期滞在中の外国人が出国後に感染し、韓国に戻ったケースを確認した。そのため6月以降、海外から再入国する外国人を対象に、入国の際に現地の医療機関が発行した診断書の提出を義務付ける方針を表明。入国者を通じた感染拡大への警戒を続けている。
 ◇アプリに期待
 中国の次に感染拡大の「震源地」となった欧州連合(EU)各国も、3月に導入した出入国制限などの緩和に動き始めた。経済的打撃が深刻化する中、GDP(域内総生産)の約1割を占める観光業の再開は急務で、3万人超の死者が出たイタリアも6月3日に欧州各国からの観光客受け入れを解禁する。
 第2波到来を避けるため、EU欧州委員会はスマホの接触者追跡アプリの活用も重視。加盟国間で相互運用を目指している。人権の観点から個人情報保護を厳しく求められることもあり、多くの国で本格導入に至っていないが、実現すれば国境をまたぐ移動と感染再拡大防止の両立に大きな効果を発揮すると期待をかける。
 抗体検査を進める動きもある。ロイター通信によると、エストニアは、個人の検査結果をQRコードで証明できる「デジタル免疫パスポート」の試験運用を他国に先駆けて開始した。
 ただ、EUは基本理念である域内の移動の自由の回復を「第一の目標」(内務担当のヨハンソン欧州委員)に位置付けている。域内優先の姿勢と言え、日本を含む第三国からEUへの原則入域禁止の解除は、まだ先になる。 (C)時事通信社