「生きていくため」。新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言解除で街に人が戻り始める中、長引く自粛営業で収入が激減した飲食店経営者が、店を維持しようと試行錯誤を重ねている。副業として飲食宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員を始めた女性は「ぼけっとしていても仕方ない」と前を向く。
 5月24日午後5時半ごろの東京・歌舞伎町。和食料理店「ゆいまーる」を営む佐藤知英子さん(45)は、休業中の店舗でスマートフォンを見詰めていた。数分後、アプリが集荷依頼を知らせると、慌てて店を出発。電動アシスト自転車に乗り込み、約300メートル先のドーナツ店へ向かった。
 佐藤さんは、自粛下で客足が遠のいた3月、店の家賃や生活費を補填(ほてん)しようと配達員に登録した。配達中は布マスクを着け、客に渡す料理が入ったポリ袋は持ち手を触らないようにするなど感染予防を徹底してのスタートだった。
 慣れない副業は、思うようにいかないことも。「自粛期間中は配達員が増え過ぎて、時給700円程度しか稼げない日もあった」ほか、配達帰りの深夜に路上で自転車ごと横転し、顔面や右膝などをけがした。それでも、4月3日に店を休業して以降はほぼ連日、計10~12時間の配達を続けた。
 緊急事態宣言の解除を受け、今月1日から店を再開したが、時間を短縮し、席数も半分に減らして営業する。「今月の客足は以前の3割程度だろう。100%戻るのに1年はかかるのでは」と顔を曇らせる。だが、配達員をする中で「どんな弁当が売れるかよく分かった」といい、テークアウト用の弁当販売を工夫しながら、常連客らに料理を振る舞う日を目指している。 (C)時事通信社