新型コロナウイルスの影響でがん検診の中止が相次ぎ、早期発見や治療開始の機会を逸する懸念が強まっている。専門家は、検診の遅延が救える命を脅かす危険性を生むと指摘。緊急事態宣言解除を受けた再開の動きに、「忘れずに受けてほしい」と訴えている。
 厚生労働省は4月、新型コロナ対応を優先させるため、都道府県にがん検診の原則延期を要請。宣言解除後、感染防止策を講じた上で地域の実情に応じて再開するよう通知した。
 待合室の「3密」を防ぐ意味もあり、全国で集団でのがん検診中止が相次いだ。札幌市は4月14日から5月まで中止し、今月から再開。大阪市は4~6月の取りやめを決めている。企業内検診の多くも中止や延期を余儀なくされている。
 国立がん研究センター中央病院(東京都)も、新型コロナ患者の受け入れのため、3月31日に人間ドック方式のがん検診を中止。今月から段階的に再開し、10月から従来通りできるよう準備している。
 がんは、約40年にわたり日本人の死因の首位を占める。同センターの統計(2010~11年診断)によると、死亡数が最も多い肺がんの「5年生存率」は、ステージ1で81.6%だが、進行するごとに46.7%、22.6%と下がり、ステージ4では5.2%になる。
 同病院の検診センター長で、大腸がんが専門の松田尚久医師は「大腸がんは6カ月でステージが進む可能性がある。本来救えるがんの発見が、検診のストップで遅れてしまうかもしれない」と危惧する。検診で見つかる大腸がんの約6割が早期で、症状のある受診時の発見は約8割が進行がんだという。
 ただ、検診再開も容易ではない。松田医師は「内視鏡検査には新型コロナの感染リスクがあり、防護衣やゴーグルなどが必要」と説明。同病院でも防護衣が足りず、レインコートで代用するなどしている。職員と患者が密集しないよう検査数を制限しており、従来の検査数の確保には時間がかかるという。 (C)時事通信社