【ロンドン時事】新型コロナウイルスの世界的な流行が続く中、ワクチンが開発された場合にいかに早く確保するか各国がしのぎを削っている。ワクチンは新型コロナ収束を目指す世界の希望だが、対立の火種となる「ワクチン国家主義」も台頭しつつある。
 ◇「先行予約権」は誰に?
 「ワクチン開発に成功すれば、最大の『先行予約』の権利は米国にある」。フランス製薬大手サノフィのハドソン最高経営責任者(CEO)が5月半ば、米ブルームバーグ通信のインタビューでこう語り、大きな反響を呼んだ。サノフィは2月、米政府から投資と研究協力を受ける協定を結んだばかりだった。
 フィリップ仏首相は「誰もが平等にワクチンを受ける権利がある。譲れない一線だ」と猛反発。サノフィは釈明に追われたが、仏独などは「ワクチン同盟」を結成し、欧州での確保を目指している。
 英政府は英製薬大手アストラゼネカがオックスフォード大と共同開発中のワクチンに投資し、自国向けに1億回分を確保。米政府はこれに追随し、5月21日に同社に10億ドル以上を投じて製造能力を増強させ、3億回分を確保した。米国人のためのワクチンを優先確保しようとする米政府の積極姿勢が目立っている。
 ◇製造・分配能力が課題に
 一方、発展途上国への分配が後回しにされるとの懸念が強まっており、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は「成功の基準は、どれだけ早く開発したかではなく、どれだけ平等に分配できたかだ」と各国に呼び掛けている。
 米製薬大手ファイザーのブーラ最高経営責任者(CEO)も「全ての政府がワクチンを確保したがっているが、全員が平等に得られるようにする」と強調。他の製薬大手と足並みをそろえ、ワクチン開発と並行して製造能力の増強に乗り出しているという。
 ただ、ワクチン開発などを支援する米マイクロソフト創業者ビル・ゲイツ氏は自らのブログで、「現実には全員が同時にワクチンを受けることはできない」と指摘。世界全体に行き渡らせるには少なくとも70億回分、おそらく140億回分が必要だと分析し、「ワクチンが開発されても、われわれには解決すべき大きな問題がある」として製造・分配能力の早期増強を訴えた。 (C)時事通信社