13億人超の人口の約6割が貧困層とされるインドで、新型コロナウイルスの感染拡大が続いている。現地で活動する日本の支援団体は、貧困層が密集して住むスラムに行政の支援が行き届かず、新型コロナに対する住民の理解も不足していると指摘。衛生状態の悪いスラムでウイルスがまん延すれば、スラム内だけでなく、住民が外部に感染を広げることにもなりかねない。
 ◇浄水確保困難
 首都ニューデリーなどでスラム住民の支援に当たる「サクラホームサービス」の水流早貴代表(28)=岐阜県七宗町出身=とニリーシャ副代表(29)。普段はスラム住民女性の待遇改善のため、仕事のあっせんを行ってきた。新型コロナの流行を受け4月下旬からはクラウドファンディングで集めた資金で直接、住民への緊急生活支援を行うようになった。
 ニリーシャさんが担当する首都のスラムには40~50世帯がひしめき合う。「水道は通っておらず、政府の給水車が毎日来る。ただ、住民はあまり清潔でないドラム缶などで水を受け取っている」状況といい、手洗いの効果にも限界がある。こうしたスラムが至る所にある。
 水流さんによると、スラムの住民はバイクタクシー運転手、ごみ収集人、工場の短期労働者、メイドといった雇用が不安定な人たちで、障害者も少なくない。政府が感染拡大防止のため3月末から実施した全土封鎖で職を失い、うつ状態になった人も多い。
 行政は米や小麦粉といった最低限の食料しか支給しない。栄養状態悪化も感染を招く。水流さんらは住民にその他の食料や、マスク、消毒液を配布。乳児向けのミルクや薬などを買うための現金も支給している。「1000~2000ルピー(約1400~2800円)で1世帯が10日から2週間生活できる」(水流さん)。
 ◇「消毒液でやけど」のデマも
 支援に際してはデマにも悩まされた。ニリーシャさんは「消毒液を手に付けた後に調理したら火が手に燃え移ってやけどをしたという動画が通信アプリ上で出回り、住民は使用を怖がった」と語る。「教育を受けていない人々に情報が伝わっていない」のは問題だと痛感したという。
 問題はスラム内だけでは収まらない。政府が経済活動再開にかじを切ったことで、スラム住民は外部に働きに出る。感染予防の知識がなければ、住民が感染の温床になりかねない。
 ニリーシャさん自身、スラムでの活動は「少し怖い」という。家の外で物資を受け渡し、「密」を避ける工夫をしているが、近所の住民が自分と話をしてくれなくなるといった影響もあった。ただ、「スラム住民の感謝という『たくさんの祝福』があるから続けられている。日本の方々の支援のおかげ」と言葉に力を込めた。
 水流さんは「新型コロナの影響で、インドにもともと存在していた貧困問題が浮き彫りになり、状況はさらに悪化している。緊急支援だけではとても立て直せない」と指摘。活動に目を向けてもらうことで「インドの社会問題をどう解決できるか考えたり、実際に解決に取り組んだりしてくれる人が増えるとうれしい」と話している。 (C)時事通信社