【ワシントン時事】専門家会議の廃止が突如決まった日本で、しばしば感染症対策機関の手本の一つと見なされるのが米厚生省傘下の疾病対策センター(CDC)だ。しかし、新型コロナウイルスの感染者・死者とも世界最多となった今も、米国では専門家と大統領の温度差は明らかで、歯車はかみ合っていない。
 CDCは感染症対策で中心的役割を担っている。しかし、米国では今、新型コロナ対応でCDCが前面に出る機会は少ない。今秋の大統領選をにらみ経済活動の規制緩和に前のめりなトランプ大統領と、感染食い止めを重視する専門家の相違が表面化することも多い。
 米政府は1月下旬、新型コロナ対策本部を立ち上げ、翌2月にはペンス副大統領が本部長に就任。以来、連日のようにトランプ氏自身が出席して記者会見を開いたが、専門家として主に同席したのはCDCのレッドフィールド所長ではなく、国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長だった。
 ファウチ氏は、エイズウイルス(HIV)やエボラ出血熱対策にも当たった感染症の権威。国民の信頼も厚く、トランプ氏もその発信力を重宝していたが、対策をめぐる両者の温度差も目立つ。
 トランプ氏が新型コロナ対応で「画期的な薬」と推していた抗マラリア薬に対し、ファウチ氏は「効果の裏付けに乏しい」と慎重姿勢。5月の上院委員会で、早急な経済再開が「手の付けられない感染拡大の引き金になりかねない」と警鐘を鳴らしたファウチ氏の発言に、トランプ氏が「受け入れられない」と反発したこともあった。
 トランプ氏は5月、対策本部を経済再開に重点を置く形で改組。一時は解任観測も浮上したファウチ氏は最終的に残ったが、対策本部としての記者会見はほとんど開かれなくなり、メディアのインタビューなどで、トランプ氏がかたくなに拒否するマスク着用の重要性を訴えている。 (C)時事通信社