【リオデジャネイロ時事】世界で米国に次いで新型コロナウイルスの感染者、死者が多いブラジルが6月以降、経済再開を本格化させている。先んじて再開に踏み切ったアジアや欧州諸国と違い、第1波が終わる兆しさえない中での「見切り発車」に、市民らは複雑な思いを抱いている。
 2月下旬に初の感染者が確認されたブラジルでは、3月下旬から感染が急拡大。実際の保健行政をつかさどる州や市は、新型コロナを「ちょっとした風邪」と軽視するボルソナロ大統領と対立しながらも、比較的早くから商店や飲食店を閉めるなどの対策を取った。しかし、景気回復軌道に乗っていた経済はすぐにまひ。貧困層が多く、貯蓄習慣が根付いていない同国では、先進国のように経済を止めて感染爆発をこらえることはそもそも不可能だった。
 政府は非正規労働者や個人零細事業者、失業給付金を受けていない失業者らに対して緊急支援金600レアル(約1万1700円)を3カ月間支給したものの、普通の食堂での昼食代が25レアルはする物価水準で生活を維持することは困難。結果として、借金を抱える世帯の割合は6月に過去最高の67.1%に達し、焦げ付かせた世帯の割合も4分の1に達した。サンパウロなど大都市では、目に見えて路上生活者が増えている。
 多くの企業も存続を脅かされており、政府が鳴り物入りで導入した緊急融資も滞っていることから、5月には全国の労働者の約12%が無給状態に陥った。全国商業連合によると、小売業者らの見通しは「かつてないほど悲観的」になっている。
 足元の苦境を受けて、これまでボルソナロ氏と対立していた州知事や市長らも経済再開を迫られた。市民86人に1人が感染した計算となる最大都市サンパウロ、観光都市リオデジャネイロの両市長は今月26日、レストランとバーを7月上旬から再開すると宣言した。
 市民の間では「ブラジルは感染者数や死亡者数が右肩上がりで増えているのに、規制を緩めるという世界で唯一の国」(アウベス・サンパウロ大医学部助教授)と再開を時期尚早とする声が上がる。一方で、5月には客室が2%しか埋まらなかったというリオデジャネイロのホテルの従業員のように「感染は気を付けなければいけないが、経済は止めてはならない」という切実な意見が多いのも事実。ブラジルでは「飢餓か感染か」というフレーズが日に日に現実味を帯び始めている。 (C)時事通信社