熊本県南部を中心に甚大な被害をもたらした豪雨発生から18日で2週間。被災地では大半の学校が授業を再開したが、「川の音が怖い」と訴える児童が出るなど、心理的ケアが課題となっている。県教育委員会はスクールカウンセラー(SC)の派遣を開始。専門家は「ストレスの対処法を学ぶ機会の確保を」と訴える。
 県教委によると、芦北町では小学生の保護者から「子どもが川の流れる音を怖がるようになった」と相談があった。他の自治体でも雨音に反応するようになった中学生の事例が報告され、県教委は17日までに9市町村の小中学校など54校にSC延べ約70人を派遣。全校が休校している球磨村の子どもが身を寄せる避難所2カ所にも1人ずつ配置した。
 道路の寸断などで校舎に通うことができなくなった八代市の市立八竜小学校と坂本中学校は15日、市中心部の公共施設を使って臨時授業を開始。両校に派遣されたSCの森上真由美さんは「皆興奮してテンションが高い」と話しながらも「後からトラウマが出る子もいる」と懸念した。
 自宅1階が浸水した人吉市の女性(48)は、小学生の2人の娘について「豪雨後いらいらしたり、体調を崩したりしている」と話す。娘が通う西瀬小では、約6割の児童の自宅が浸水。同校はストレスチェックシートを用いた健康調査を始めたが、天羽伸哉校長は「親や担任に心配を掛けないよう、正直に答えない子もいる」と打ち明けた。
 東日本大震災などの被災地で支援に当たった兵庫県立大大学院の冨永良喜教授(臨床心理学)は「今は恐怖をため込み、子どもの反応が見えにくい時期」と指摘。教授によると、心的外傷後ストレス障害(PTSD)発症を防ぐためには、被災初期に食事や睡眠などの生活リズムを取り戻し、安心感を得ることが必要という。
 同教授は児童らがストレスへの対処法を学ぶ場を確保する重要性も強調し、「授業に組み込めるよう、国は被災自治体に特例的な通知を出すべきだ」と話した。 (C)時事通信社